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 緊急事態宣言が解除され、さらに都道府県境をまたぐ移動も解禁となりました。しかし、勤務形態はまだまだ元に戻らない状況が続いています。大手企業ではテレワークを続けている企業が多く、中小企業でも実施する企業が増えてきました。こうした環境で、従来と同じ仕事の仕方をしていては、効率はなかなか上がりません。「テレワークに移行したら効率が落ちた」という話も耳にします。

 設計部門では、CADやPDM(製品情報管理)といったITツールに外部からアクセスできる環境を整えておくことができれば、テレワークも可能でしょう。しかし、大手企業はともかく、中小にはそこまでのIT投資ができている企業は少ないように思います。では、IT投資ができていない状況でテレワークなど新しい仕事のスタイルを取り入れるにはどうすべきでしょうか。今の仕事のスタイルをある程度効率化しなければなりません。

図面を“描いてはならない”

 設計効率を上げるために最初に考えるべきことは、不要な業務を削除したり、ムダな業務を探したりすることではありません。設計者が最も時間を費やしているのは製図業務です。設計効率を向上させるためには、できる限り図面を描かないようにする。図面を描くから、図面ミスや検図が発生するのです。図面を描かなければそうした業務は発生しません。

 では、本当に図面を全く描かないということが可能なのでしょうか。製品によっては可能だ、と私は考えています。

 設計者の仕事の仕方を見てみると、製品の仕様(製品仕様書や設計仕様書)が決定した時点で、「過去の図面で使えるものはないかな」と考えながら、過去のCADデータを検索しています。見つかった場合は流用しますが、見つからなかった場合は新規に図面を作製します。

 人によっては経験が浅かったり、検索のキーワードや検索方法に問題があったりして、過去のCADデータを探せずに、新規に図面を作製してしまうことがあります。そうした図面は当然、新たな図面としてPDMに登録されます。こんな状態が続くとどうなるでしょうか。類似製品や部品の図面が多く存在することになります。

  • 全く同じ形状にもかかわらず、図面が2つある。
  • 寸法が少し異なるだけでほぼ同じ構造の部品図面が複数存在する。

 つまり、ムダな仕事をしてしまっているのです。

 図面を作製すると新たな図番が登録されるため、新規部品として登録することになります。すると、購買や資材調達にも新たな部品として登録することになり、新たな発注となります。結果、製造も新たな部品として製造することになってしまいます。すなわち、設計部門だけのムダでは済まず、後工程の全ての部門でムダな仕事が発生してしまうのです。

 こうした事態を防ぐために、新たな図面を作製する際には注意が必要です。可能な限り過去の図面を流用しなければなりません。その仕組みを設計部門で構築するには、「モジュラー設計」の考え方が有効です。私は、モジュラー設計が設計効率を劇的に向上させる手っ取り早い方法だと考えています。

モジュラー設計の定義と考え方

 では、企業の規模に関係なく実践できるモジュラー設計の定義や考え方はどのようになっているのでしょうか。

図●モジュラー設計の全体像
図●モジュラー設計の全体像
(作成:A&Mコンサルト)
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[1]固定部

 形状や寸法は変更なし(変更する必要がある場合、固定部から変動部に格下げ)。

[2]変動部

 形状と構造は変更しない。寸法のみを変更する。パラメトリック設計。3D-CADデータのモデリングも完成しているため、寸法値を入力し、他の部品との干渉をチェックする。

* パラメトリック設計 CADデータにおいて寸法値や体積、質量などの数値、接線性や直交性などの幾何的な関係、図形同士の取り付け方法といった情報をモデルデータに対する条件として扱い、この条件を変更することでモデルの多様な変形を可能にする設計手法。設計変更への対応や、多様な設計案の検討などに有効。

・パラメーター標準化検討

 変動部から固定部に格上げ可能なように標準化を検討する。この場合、全ての機種が満足できるパラメーターの標準値を検討する。標準パラメーターを設定する場合、固定部に影響があるときは固定部のパラメーターも同時に変更の検討を行う。

[3]個別部

 固定部と変動部では要求機能を満たせない場合、新規設計を検討する(この部分が新規図面作製部分になる)。ここでの設計思想は、設計終了後に変動部に格上げ可能なように単純な構造で設計検討していく必要がある。

・形状標準化

 個別部から変動部に格上げを検討する。全ての機種が満足できる形状を検討する。