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手遅れになる前にすべきこと

 設計者は機能設計図面ができた後、その図面を生産技術部門や製造部門に提出し、品質を保った生産を行うことが可能か否かについて検証してもらいます。生産技術部門や製造部門は変更や修正が必要な部分を見つけたら、その情報を設計者にフィードバックします。すると、設計者は、その情報をそのまま受け入れることができるのか、機能に影響を与えないかなどと検証し、図面を変更していきます。こうして完成するのが生産設計図面なのです。

 生産設計図面を受け取った生産技術部門や製造部門は、生産工程を構築するための情報として、新しい図面で変更されている部分のみを確認していきます。ここで設計者と生産技術部門や製造部門がコミュニケーションをうまく取っていけば、製造段階での設計者への問い合わせや、図面変更の依頼などが大幅に減少していくことでしょう。

 例えば、製品に使用する「ねじの種類」を確かめてみてください。M2やM3といった小さいねじ(ビス)から大きなものまで使用しており、種類も皿ねじや鍋ねじなどたくさん存在する。長さが異なるねじも設定されている──。こうした状況ではありませんか。

 機能的に考えて、そこまで多くの種類のねじが本当に必要なのか再検討すべきです。多くの場合、「以前からそのねじを使用していた」という実績(前例の踏襲)に頼り、機能的に必要か否かの議論をせずに出図しています。生産技術者はそうした点に疑問を持ち、本当に必要なのかを考えて、「生産工程やタクトタイム上、これだけのねじの種類に絞ってほしい」などと要望を出してほしいと思います。

 設計者の業務負荷が増加している中、生産設計の部分まで設計者に求めるのは酷です。そこで、生産技術部門や製造部門が図面を見て生産設計を行い、図面にフィードバックさせるための内容を設計者とコミュニケーションを取りながら決定するとよいでしょう。そうすれば、製造段階での設計者の負荷が軽くなるだけではなく、スムーズな製造が可能となります。

 受注生産企業の中には生産技術の機能を持っていない企業もあるかもしれません。その場合は、これを機に、ぜひ生産技術部門を新設してください。フロントローディング型のプロセスに変革し、QCD(品質、コスト、納期)の高い製品を市場に投入できるようになることでしょう。

中山 聡史(なかやま さとし)
中山 聡史(なかやま さとし) A&Mコンサルト 経営コンサルタント 設計業務を中心にトヨタ流の改善や問題解決の考え方や方法を指導するコンサルタント。現場視点、かつ技術者の目線に立った具体的で分かりやすい指導に定評があり、コンサルティングの実績も豊富。
 トヨタ自動車では、クルマの開発設計の“心臓部”と言われるエンジンを担当。その設計から開発、品質管理、環境対応など幅広い業務に従事した。トヨタブランドでは「カローラ」から「クラウン」などを、レクサスブランドでは「IS」「RX」などヒット車種のエンジンシステムを設計し、海外でのエンジン走行テストなどにも同行経験がある。
 その後、A&Mコンサルトのコンサルタントに転身し、製造業を中心に設計改善やトヨタ流問題解決の考え方のコンサルティング業務を展開。「ものづくりのQCDの80%は設計で決まる!」の理念の下、自動車メーカーでの設計や開発、製造、品質保証などの経験を生かし、多くのものづくり企業にモジュラー設計導入や設計業務改革、品質・製造改善、生産管理システムの構築などを支援している。
 「日経クロステック」にて人気コラム「トヨタに迫れ!検図の極意」を執筆。