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 現在の設計の多くは、モジュラー設計(流用設計)で進められています。ただし、標準化されたモジュールを流用するだけで新しい製品を創造することは難しく、大抵の場合、新しい設計要素を組み込む必要に迫られます。未来に起こり得る市場トレンドを完璧に予測することは難しく、全ての設計要素をモジュールとして用意するのは難しいからです。顧客の多様化が進んだ今の市場を見れば、納得がいくことでしょう。

 加えて、新たな技術革新も進んでいくため、新規設計領域は必ずと言ってよいほど発生します。従って、この新規設計領域をうまくコントロールしながら、ロスやミスなく効率的に設計を進めていかなければなりません。

 では、そのためにどのような設計の仕組みを導入する必要があるのでしょうか。私が提唱するのは「変化点管理」です。「そんなことは知っている」と思った人もいるかもしれません。確かに、変化点管理の考えは以前から設計者に知られています。

 ところが、実は、変化点管理を仕組みとして採り入れた(仕組み化した)システムはほぼないに等しく、設計者に任されているというのが現実です。さらに言えば、どのような変化点にするかを判断するのは簡単ではありません。設計担当者が1人で適切な判断を下すのは非常に困難です。そのため、変化点管理を仕組み化し、設計組織全体で変化点を正しく判断しなければなりません。

 変化点を正しく捉えることにより、設計の後工程での詳細設計時に発生するロスやミスを低減でき、フロントローディングを実現できます。その意味では、変化点管理も問題発生を未然防止する方法の1つと言えるかもしれません。

設計品質を確保する仕組み
設計品質を確保する仕組み
(出所:日経クロステック)
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「横並び」の最大の目的は品質の確保

 変化点を抽出したら、次に新規設計要素を組み込んで、新規設計部分と既存設計部分のインターフェースを合わせていく必要があります。その際に、既存設計部分を変更しなければならない場合もあるでしょう。ここで大切な考え方に「横並び」があります。トヨタ自動車では、この言葉が設計部門で飛び交っています。

 では、「横並び」とは何でしょうか。形状や寸法、定数が類似していることを確認した上で、過去の実績を踏襲する考え方のことです。例えば、機械部品であれば「同じ機能を持った部品同士を比較したときに、形状や寸法が類似していること」となります。ソフトウエアであれば「同じ機能をアウトプットできるソースコードに対し、定数が類似していること」です。

 横並びの最大の目的は、「特異な(異質な、あるいは飛び抜けて異なる)新しい設計要素をできる限り除外し、安定した品質を確保すること」にあります。もちろん、類似形状だからといって問題が発生しないという保証はありません。それでも、過去の実績を踏まえて、品質が確保されている部品に合わせていくという考え方が大切なのです。全ての部品で品質を新たに担保していくと大きな労力がかかってしまうし、抜けや漏れも発生してしまうからです。

 具体的には、設計の検証時に「横並びから外れていないこと」を確認することで品質を担保します。一方で、「横並びから外れる部分」に対しては、技術的根拠である必然性を明確にして、品質を担保していくことになります。

 要は、過去の実績をうまく活用して設計を進めるということです。なぜならこの方法が、品質確保の面でも設計リードタイム短縮の面でも、最も大きな効果を得られる方法だからです。