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 皆さんは設計者をマネジメントする考え方や方法を社内で統一していますか。また、設計マネジメントの在り方について悩みはありませんか。私が支援しているクライアント先では、マネジメントの在り方に悩んでいる設計部門の管理職がたくさんいます。管理職が抱える悩みとは、次のようなものです。

・年齢を重ねて管理職になったものの、マネジメントの在り方が全く分からない。また、それを学ぶ教育のシステムもない。
・教育のシステムはあるものの、一般的なマネジメントの方法しか扱っていない。設計部門を預かる管理職として、本当にそのマネジメントだけでよいのか分からない。
・設計には「カン(勘)やコツ」がたくさんあり、それらをどのように伝えればよいのか分からない。
・自分の考えを伝えるのが難しいため、部下にやらせず、自ら図面を描いてしまう。

 皆さんはこうした悩みを抱えたことはないでしょうか。正直に言うと、私はあります。初めて部下を任された時のことです。「ええい、いっそのこと自分でやってしまおう」とも考えました。しかし、1人で全ての業務をこなすことなど到底できません。やはり、自分は調整役や教育役に回るのが正しい姿だと考え直し、部下に協力してもらったり任せたりしながら業務を進めていきました。この時の経験も踏まえて、本来の設計マネジメントの在り方を考えてみたいと思います。

 まず、設計マネジメントの定義について考えてみましょう。

設計マネジメントの定義
設計マネジメントの定義
実施すべきマネジメントの内容は3つある。(作成:日経クロステック)
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設計マネジメントの定義

 設計マネジメントの定義はこうです。

「創造的なアイデアを付加価値に変える具体策の方向性を取りまとめること。加えて、方向性を検討する中でリスクを回避(または最小化)しつつ、最も効率的な生産性を実現すること」

 つまり、設計の方向性を示し、リスクと生産性を併せてマネジメントしていくことが重要なのです。当たり前のことですが、改めて文章にしてみると非常にコントロールが難しく、かなり高度なマネジメント能力を要求されることが分かります。

 この設計マネジメントの定義を踏まえ、具体的に実践すべきマネジメントの内容を考えていきます。結論から言えば、[1]創造的なアイデアを付加価値に変える具体策の取りまとめと、[2]リスク回避(または最小化)、[3]最も効率的な生産性の実現、となります。順に説明していきましょう。

[1]創造的なアイデアを付加価値に変える具体策の取りまとめ

 設計では、全ての内容について設計方針を示す必要があります。現在の設計の方法は流用設計が中心なので、設計方針は流用元の選定と変更の考え方が中心となります。具体的に列挙すると次のようになります。

(1)設計の考え方・顧客の思い

(2)流用元の選定とカスタマイズ内容の明確化

(3)競合他社に対する差異化の方針

(4)コスト方針(目標原価の設定とコストダウンアイデアの方向性)

 管理職は、これら4つの内容を設計方針として立案しなければなりません。これらを部下に丸投げしてしまうと設計ができないか、できたとしても設計者ごとに異なる製品が出来上がってしまいます。同じ製品であるにもかかわらず、設計者によって違う製品ができてしまう……。これはマネジメントする者として、あってはならない状況です。

 では、これら4つの中身について詳しく解説していきましょう。