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 新規図面を作成する際に、「この形状は加工できるのだろうか」「この寸法は測定できるのだろうか」など、加工や生産のことで悩むことはありませんか。

 私が新人設計者だった頃は、上司や先輩から「分からないことは現場に行って確認せよ」と言われていたこともあり、評価の現場や試作工場の現場によく足を運んでいました。当時はある程度設計者に余裕があり、現場を学べる環境であれば、設計者も加工や生産のことを理解したり勉強したりすることが可能でした。

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 しかし、今はどうでしょうか。設計者にかかる負担がはるかに大きくなっており、設計担当者に限らず、管理・監督職も多くの仕事を抱えています。おまけに、働き方改革などによって仕事の時間も制限されており、昔よりもさらに効率的に仕事をこなさなければなりません。こうした状況下で設計者のみを責めるのは酷です。責めても問題は解決しませんし、今の時代に合った設計の在り方や図面品質の確保の仕方が必要だと私は感じます。

 設計はITツールなどによって効率化が進められているものの、設計の教育や設計のプロセスなど根本的な部分に大きな変化はありません。設計マネジメントについても同様です。今の時代に合った設計部門を構築しなければ、いつまでたっても設計部門から出図される図面品質は低いと言われ続けてしまいます。

 設計品質や図面品質の向上のためには、次の4点の改革が必要になります。

  • [1]設計者教育の構築
  • [2]設計品質ツール〔DR(設計審査)やDRBFM(故障モードに基づく設計審査)など〕の使い方の見直し
  • [3]設計開発プロセス改革
  • [4]設計マネジメント

 今回は[1]設計者教育の構築[2]設計品質ツールの使い方の見直しに焦点を当てたいと思います。

設計者教育を行っているか

[1]設計者教育の構築

 皆さんの会社では設計者教育をどのように行っていますか。多くの企業は基本的な設計者教育をOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)に頼っているというのが現状です。設計者といっても機械などのハードウエア設計やプログラムなどのソフトウエア設計などさまざまな領域があります。

 その各領域での教育計画が決まっておらず、教育自体が設計現場任せになってしまっているのではないでしょうか。これではOJTをする側の能力によって、設計者の成長度合いが大きく異なってしまいます。加えて、人事制度の目標管理により、新たな目標を定めたとしても自助努力のみになってしまうでしょう。

 そうならないためにも教育体系を立案し、確実に1つずつ教育していくことが大切です。それとともに、教育の結果、能力が身に付いたかどうかを管理するためにもスキルマップが必要になります。

 その教育体系の中に追加してほしいのが、加工や生産現場に関する教育です。加工や生産現場を机上で学んでも身に付きません。見学するのはもちろん、図面を描いて自分で加工したり、組み立ててみたりすることが、加工や生産現場に関する知識を習得して能力を向上させる一番の近道です。私が学生の時には旋盤やフライス盤を自分で使用し、図面通りに加工してみるという授業もありましたが、今の大学ではそのような授業がだんだん少なくなってきているようです。そのため、会社で教育していかなければなりません。

 ところが、多くの企業が教育体系に加工や生産現場に関する教育を組み込んでいません。そのため、机上でしか勉強せず、加工できなかったり組み立てられなかったりする図面をいとも簡単に描いてしまう設計者が目に付くのです。この問題を解消するためには、日本の製造業の強みでもある加工や生産現場のノウハウを確実に設計者に伝承していく教育を実施していかなければなりません。