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 設計の仕事に取り掛かるときに最初に検討することは何でしょうか。かつて私が設計者であった時にも、必ず実施していました。それは、「流用元を調査し、探すこと」です。過去から存在する機能を実現している製品であれば、必ず流用元が存在します。しかし、この「流用設計」には大きな落とし穴が存在します。

 次のような経験はないでしょうか。

  • 流用したものの設計の変更点が多過ぎて、新規設計する方が楽だった。
  • 適切な流用元を選択せずに後悔した。
  • 不具合やクレームが未解決の流用元を選択してしまい、同じ問題を発生させてしまった。
  • 今回要求されている機能には必要のない機能が入ったまま流用してしまった。

 これらは設計者であれば誰もが1度は経験する失敗です。しかし、この失敗は設計者が悪いのではなく、流用設計における仕組みに問題があるのです。

 設計で実施してはならないと私が声を大にして言いたいのは、部品や構成を単純に削減(マイナス)することです。部品をマイナスする際には、その部品が担う複数の役割を考えて、周囲の部品や構造への影響を検討しなければなりません。1つの部品が単一の役割しか果たしていないことは少なく、多くは複数の役割を担っているため、1つの部品をマイナスすることでいろいろな部品に影響する可能性があります。流用設計で設計者が陥る失敗の多くは、このマイナスすることによって発生しているといってよいでしょう。

 では、流用設計でこの問題を回避するにはどのようにすればよいでしょうか。

(作成:筆者)
(作成:筆者)
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 流用設計のポイントは3つあります。[1]標準の確立、[2]標準のバリエーション、[3]オプション体系です。

流用設計のための3つのポイント

[1] 標準の確立

 流用設計は過去の製品を流用して設計することではありません。過去の製品には、その当時における市場や顧客からの要求が多く含まれており、さまざまな変更がなされています。それらの変更が今回も必要とは限りませんし、過去にどのような変更があったのかを調査するだけでも多くの時間を要してしまいます。過去の製品を流用しようとするからこそ、設計のマイナス業務が発生してしまうのです。

 こうした事態を防ぐために、製品に求められる最低限の機能、すなわち基本機能のみを搭載した「標準」を整備しておくべきです。

 注意しなければならないのは、アップデートされていないために標準を使用することができず、結果的に過去の製品を流用しているケースが多く見られることです。標準は1度作ったら終わりではありません。市場や顧客から要求される基本機能は常に変更されていくので、それに合わせて標準もアップデートしなければなりません。