全2405文字
PR

 現在生み出されている製品の多くはシステム製品です。もともとメカ(機械)だけで駆動していた部分を電動化することで、製品に多機能化をもたらしました。ここにさらに制御を加え、市場や顧客の要求に応えようと日々進化しているのが、システム製品です。では、このシステム製品は、どのような組織体制で設計が進められているのでしょうか。

 自動車メーカーを代表に、製造業にはメカを基盤としたものづくりから発展した企業がたくさんあります。そのため、システム製品と言いながらメカ設計がベースになっているケースが多く見られます。そうした企業では、次のような設計の進め方をします。

 まず、メカの大部分を決定して設計した後、メカ設計では実現できない部分をエレキ設計によって電動化してユニットにする。続いて、その電動化されたユニットをソフトウエア設計(以下、ソフト設計)で制御するシステム製品に仕上げる──というものです。

現行のシステム設計の進め方
現行のシステム設計の進め方
メカ設計がベースとなり、実現できない部分をエレキ設計、ソフト設計で造り込んでいく。(作成:筆者)
[画像のクリックで拡大表示]

 つまり、[1]メカ設計と[2]エレキ設計、[3]ソフト設計の3つの設計部門がバトンタッチしながら設計を進めていきます。これは、メカ設計が決まらないとエレキ設計によって電動化する部分が明確にならず、さらにエレキ設計が決まらないとソフト設計で制御すべき内容が決まらないといった構図です。

 こうした設計の進め方を採るため、設計の主役はメカ設計であり、メカ設計者が全体をマネジメントすることになります。この設計組織体制が必ずしも間違っているというわけではありません。しかし、メカ設計が完了してから設計をスタートしているため、エレキ設計やソフト設計で実現したいことができない可能性があります。また、メカ設計で不具合が生じると、その不具合の影響をエレキ設計やソフト設計も受けてしまい、再度設計をやり直さなければならなくなります。

 さらに言えば、設計の終盤になって性能が出ない場合や目標品質に届かない場合、メカ設計を修正するのは時間とコストがかかるため、ソフト設計でなんとか対応できないか検討することになります。その結果、ソフト設計の負荷が重くなる上に、結局は性能や目標品質を満たせないといった状況が発生してしまうのです。

「ソフトウエアファースト」に見直す

 このように、設計部門でメカ設計の立場が強すぎて、システム製品であるにもかかわらず、メカ設計の方法から脱却できていないケースが目に付きます。設計者の人数割合もメカ設計がダントツに多く、エレキ設計やソフト設計が少ない場合が珍しくありません。

 こうした組織体制では、付加価値の高いシステム製品を生み出すことができません。従来のメカ設計中心の製品に「+α」した程度の改良型製品の設計が中心になってしまいます。これでは環境変化の速い昨今のグローバル環境に付いていくことができません。

 では、具体的にどのように組織体制を見直す必要があるのでしょうか。2020年3月にトヨタ自動車が「ソフトウエアファースト」を宣言しました。この宣言の中には「ハードウエアとソフトウエアを分離してソフトウエアを先行して開発すること」とあります。私はこれを、「開発の主導権をソフト設計が担いなさい」という意味だと捉えています。これからは最初にソフトウエアによって実現すべき機能を検討し、そのソフトウエアの動作を可能にするハードウエアを選定して設計するという流れに変わっていくことでしょう。

ソフトウエアファーストの設計の進め方
ソフトウエアファーストの設計の進め方
ソフト設計による構想設計があり、その構想設計の結果を受けてメカ設計およびエレキ設計がコンカレントに開発を進めていく。(作成:筆者)
[画像のクリックで拡大表示]