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 皆さんの会社では設計者の教育をきちんと行っていますか。実は、設計者の教育がないという日本企業は少なくありません。新入社員教育の後、配属された設計現場で実践教育、すなわちOJTで済ませているケースが多いのです。

 改めて、OJTとはオン・ザ・ジョブトレーニングの略で、実践で指導していくことによって知識や技術を習得していく方法です。多くの企業がこのOJTのみの教育に頼っているというのが現状です。

 OJTは有効な教育方法の1つです。しかし、それだけでは問題があります。OJT担当者の設計スキルや、実際に抱えている開発設計案件によって、習得できる知識や技術が偏ってしまうからです。そのため、設計者全員に同じ教育を施しているとはいいがたい状況になってしまいます。こうした教育を続けても、設計部門全体のスキル向上(能力の底上げ)にはつながりません。これではいつまでたっても課長や部長が図面の作成から離れられない状況が続くことでしょう。

設計者に有効な3つの教育方法
設計者に有効な3つの教育方法
(作成:日経クロステック)
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 クライアント先で設計者の教育に向けた体系化の議論をすると、次のような意見が上がります。

  • 設計は他の部門と違って、実践でしか知識の習得ができない
  • 知識は教えられるものではなく、先輩の仕事の仕方を見て盗むものだ
  • 研修のような教育をしたところで、実践では使えない
  • 新人の間に教育してもどうせすぐに忘れる

 こうした意見を持っている設計者がOJT担当になると、どうなるでしょうか。「OJTという名の無教育」になるのです。確かに、こうした意見にも理解できる部分はあります。しかし、ベテランと呼ばれる設計者が教育を受けた時代と現在とでは置かれた環境が異なります。今の若い設計者は、決められた労働時間の中で効率的に設計し、高い品質の製品を創り出さなければなりません。そのためには、OJTだけに頼らない教育による新人設計者の能力の底上げが企業にとっての大きな課題です。

 では、どのような教育を実施すべきなのでしょうか。設計者にとって有効な3つの教育方法があります。[1]スキル項目とスキルマップ、[2]OFF-JT、[3]OJTです。

設計者に有効な3つの教育方法とは

[1]スキル項目とスキルマップ

 まず、各企業の製品を設計するために必要なスキルの項目を列挙します。列挙の方法については、具体的なスキルの項目を検討する前に、区分や要素を抽出するのがよいでしょう。例えば、「図面要素」「設計要素」「品質要素」「コスト要素」「マネジメント要素」などになります。それぞれの要素の内容に従い、スキル項目を検討していきます。

 では、それぞれの内容の具体例を見ていきましょう。

  • (1)図面要素:寸法公差の設定能力、幾何公差の設定能力など
  • (2)設計要素:構造計算の能力、駆動力の計算能力など
  • (3)品質要素:信頼性設計の能力、品質管理システム(QMS)など
  • (4)コスト要素:VE(価値工学)・VA(価値分析)手法、原価計算の能力など
  • (5)マネジメント要素:設計戦略の立案能力、リスクアセスメントの立案能力など

 こうしたスキル項目を抽出し、各役職における必須スキルの内容を設定していきます。

 各スキル項目には、OFF-JT(オフ・ザ・ジョブトレーニング、普段の業務を通じて社員を教育するOJTに対し、現場から離れて別途時間や場所を設けて実施する教育)の欄と、OJTの欄の2つが必要になります。というのも、OFF-JTで習得しても、実践で活用できなければ意味がないからです。そのため、OFF-JTで得た知識を実践で活用することで、深く学習したかどうかをOJT側で判定していきます。そのためにOFF-JTとOJTの2つの欄が必要となるわけです。

 基本的にはOFF-JTの後にOJTを実施すると効果的だと思いますが、OJTの後に知識を体系的に理解するという意味でOFF-JTを実施するのも意味があると考えます。