全2225文字
PR

 品質管理に関する国際規格「ISO9001」を取得している企業では、設計者にとって“恐怖”の設計審査(デザインレビュー、DR)が行われます。多くの企業でDRは設計を審査し、次の工程に進んでもよいかどうかの承認を得る場として扱われています。果たして、DRとは承認行為のみを行う場なのでしょうか。

 では、まずISO9001の設計・開発のDRに関する記載内容を確認してみましょう。

7.3.4 設計・開発のレビュー

 設計・開発の適切な段階において、次の事項を目的として、計画されたとおりに体系的なレビューを行うこと。

a)設計・開発の結果が要求事項を満たせるかどうかを評価する。

b)問題を明確にし、必要な処置を提案する。

 レビューへの参加者として、レビューの対象となっている設計・開発段階に関連する部門の代表が含まれていること。このレビューの結果の記録及び必要な処置があればその記録を維持すること。

 このように書かれています。ISO9001の内容を端的に解釈すると、確かに「承認」行為と考えることができるかもしれません。特に、a)の「要求事項を満たせるかどうかを評価する」の部分です。

 しかし、本来のDRは、承認行為のみが目的ではありません。評価することはもちろんですが、b)の「問題を明確にし、必要な処置を提案する」ことが重要なのです。

 a)とb)の考え方をまとめてDRを定義すると、次のようになると私は考えます。

真のDRの定義

  • 設計段階で性能、機能、信頼性、価格、納期などを考慮しながら設計内容について審査し、改善を図るために用いられる手法
  • 審査には企画、設計、製造、検査など各分野の専門家が参加する

 本来の姿は、問題点を抽出し、改善策をDR参加メンバーで考えることです。つまり、DR参加メンバーによる設計部門の応援活動です。DRが設計者の説明会や設計者をつるし上げにする会であってはなりません。

 そこで、そのような状況にならたないための「裏技」を紹介しましょう。

DRの「裏技」─2つの仕組み─

図1●DRの裏技
図1●DRの裏技
(作成:筆者)
[画像のクリックで拡大表示]

 DRを全員で議論する場に変えるためには、2つの仕組みが必要です。[1]資料の事前配布+設計者の説明の省略、[2]問題点の事前抽出です(図1)。

 まず、[1]の資料の事前配布+設計者の説明の省略では、資料を事前に配布し、参加者にDRまでに内容を読み込んできてもらうのです。そうすることにより、DRにおいて設計者の説明を省略できます。設計者の説明を省略することができれば、つるし上げにあう確率も少なくなるでしょうし、説明会のみになることもありません。資料のみでは分かりにくい部分については、要点のみをDRで説明するようにしてください。

 事前配布は多くの企業が実施していますが、事前配布の目的は、設計内容の説明を省略することを目的としなければなりません。事前配布しておきながら、DRの冒頭で説明するようでは意味がありません。

 続いて、[2]の問題点の事前抽出では、DRは問題点を解決する場なので、問題点を抽出することは事前に済ませておきます。DR参加者が事前に配布された資料を読み込み、問題点を抽出して、DR参加者の全員が書き込めるドキュメントに問題点を書き込んでいきます。DRの主催側である設計者は、事前に書き込まれた問題点を確認し、その問題点に対する対応策を考えておきます。DRでは対応策を解説し、対策の方向性に問題がないかどうかを議論していきます。

 また、設計のみでの対策では難しい場合、設計部門からDR参加部門に対応を依頼し、設計と協力して解決する道を探っていきます。

 このように、事前に問題点を抽出することで、DRにおいて思い付きによる発言などが少なくなり、一方的な問題提起がなくなることでしょう。

 これらの内容をまとめたフローを図2に示します。

図2●真のDRのフロー
図2●真のDRのフロー
(作成:筆者)
[画像のクリックで拡大表示]