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 今回は、設計品質ツール(品質管理手法)である「DRBFM」の在り方について改めて考えてみたいと思います。DRBFMはDesign Review Based on Failure Mode(故障モードに基づく設計審査)のこと。2001年にトヨタ自動車が開発したもので、自動車業界はもちろん、さまざまな業界に広まっていきました。最近では半導体業界でもDRBFMが使用されています。ところが、製造業で使われている状態を確認すると、以下のようになっている企業が多いようです。

・DRBFMのワークシートに記入することが目的となっている
・設計が完了してからDRBFMを使用している
・過去のDRBFMをコピーしている
・DRに提出するためだけの資料となっている

 こうした使用方法では設計者の負担が大きくなるだけで、本来の目的である「問題の未然防止」につなげることができません。多くの業務をこなさなければならない多忙な設計者が工数を割いて作成するDRBFMは、意味のあるものにしなければなりません。そうしなければ、設計者が「問題の未然防止活動」に前向きに参画することはないでしょう。

DRBFMの目的
DRBFMの目的
設計段階の問題発生を未然に防ぐ効果もあるが、その目的ではあまり活用されていない。(写真:日経クロステック)
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 では、DRBFMの定義から確認しましょう。

Design Review Based on Failure Modesの定義:トラブルの未然防止活動

「設計変更点や条件・環境の変化点に着眼した心配事項の事前検討を設計者が行い、さらにデザインレビューを通して設計者が気づいていない心配事項を洗い出す手法。この結果得られる改善などを設計・評価・製造部門へ反映する事によって未然防止を図る」

 DRBFMの定義は上記の通りで、目的は「問題の未然防止」です。では、問題の未然防止を、どの段階で検討しなければならないのでしょうか。

 最終段階である市場における問題の発生を防止することはもちろんですが、製造段階での問題発生による手戻りややり直しを防ぐこともDRBFMの目的の1つです。多くのDRBFM実施者はこれら2つの段階の問題を未然に防止することを考えていると思いますが、実はもう1つ対象に入れたい段階があります。それは、「設計段階」です。

 皆さんは設計段階でのやり直しを防ぐためにDRBFMを活用しているでしょうか。そうした設計者はごく一部だと思います。

 では、なぜ設計段階による問題の未然防止が必要なのでしょうか。皆さんは次のような経験はないでしょうか。