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 皆さんは設計にモジュール化の手法を組み込んでいますか。また、商品企画の際にモジュール化を意識してコンセプトを決めていますか。モジュール化による目指すべき姿は次のようなものです。

  • 顧客が仕様を選択することで、初めて製品全体の仕様が導き出されるような製品やソリューション(ノートパソコンのような仕組み)。
  • 故障しても専門の作業者が修理するのではなくモジュールごと差し替え、すぐに原状復帰できるような状態(ただし、コストが高額になる可能性があり、その点は顧客の承認が必要)。

 このようにモジュール化した内容をアーキテクチャーに落とし込み、販売からアフターメンテナンスまでに至る全体の仕組みを変えてこそ、モジュール化の真の価値が発揮されるのです。

 ところが、日本ではこうしたことを実施している企業はほとんどありません。「一応、モジュール化を意識して一部の設計は効率化できている。しかし、最終的な製品やソリューションにはあまり反映されていない」という話をよく耳にします。それはなぜでしょうか。その理由を考えながらさまざまな企業で私がヒアリングした結果、次のことが分かりました。

日本企業でモジュール化が進まない理由

  • アフターメンテナンス担当者の仕事がなくなる。
  • 顧客に仕様を選んでもらうなどとんでもない。「お客様は神様」であり、全ての要求に対して全力で応えることが自社の強みである。
  • 機種がなく、モジュールのみの管理は難しい(分かりにくい)。
  • 商品企画ではなく、モジュール企画は能力的に難しい(設計の詳細内容が分かっていないとモジュール企画をすることができない)。

 こうした理由からモジュール化を実現できていないようです。特に受注生産型の企業にその傾向があるように感じます。今後、日本の労働人口が大きく減少していく中で、カスタマイズは強みにはなりません。むしろ弱みになってしまう可能性さえあります。カスタマイズを担当する設計者や、それらの加工・組み立てを担う製造者、さらにはアフターメンテナンスを行うサポート担当者の全ての業務が属人的になっている点が問題です。彼ら彼女らの退職に伴い、強みを失っていくからです。

 そうした状況になる前に手を打たなければならないことを肝に銘じてください。カスタマイズしている部分をノウハウ(形式知)化し、それらの内容を標準化することによって、最終的なモジュール化が完成するのです。

 モジュール化は単に設計効率を上げるためのツールではないのです。本来的な最終地点を明確にし、全社的に取り組まなければなりません。

設計の仕方の問題点

 また、モジュールを構成する製品や機種の設計の仕方に問題がある場合も少なくありません。それらの課題も併せて見ていきましょう(受注生産の製品の課題を確認)。

  • 各機種をそれぞれ開発・設計しているため、共通化できていない。
  • 同じ機能が求められるオプションでも装置構成が機種ごとに大きく異なるため、構造が異なる(すなわち、機種をまたぐモジュール化ができない)。
  • 機種の設定はあるが、それぞれが単独で存在しており、ラインアップという考え方がない。
  • 各機種で個別に設計を行っているため、ある機種を設計している設計者は別の機種の設計内容を把握できない(各機種やグループで専任化しており、ノウハウの伝承ができない)。
  • 機種で性能が重なっている。しかし、(もともとの構造が異なるために)コストには差があり、コストの高い機種は売れない。
  • オプションのカスタマイズにより、それぞれの機種を大幅に性能アップさせることが可能になってしまっている(個別最適)。

 こうした問題を抱えている場合、解決策はやはりモジュール化です。しかも、それを販売やアフターメンテナンスにまで広げて活用していく必要があります。

 では、どのようなモジュラー製品構想をどのように進めていくべきでしょうか。進め方を簡単に紹介しましょう。