高身長を誇るブラジルや米国といった世界トップレベルへの対応力を鍛え、アタック決定率を高めたい─。この要望に応えるべく開発されたのが、バレーボールの日本代表チームが練習で使っているロボット「ブロックマシン」だ(図1)。
斜め上方に伸ばした2本の腕を持つ3台の走行ユニットが、ネット前を高速で左右に移動。腕が伸び上がってブロック体勢を取る。幅9mのコートのどこに、どのタイミングで、どの高さのブロックを出すかは自由自在。世界最高レベルとされる男子ブラジルチーム並みの高さ3.2mのブロックも再現可能だ。
反復練習でアタック率向上を
日本代表チームのバレーボール・アナリストとして同マシンを使った練習を主導してきた渡辺啓太氏(日本スポーツアナリスト協会代表理事)は、「リアリティーを追求し、実際の選手の腕の弾力・反発係数なども考慮して造ってもらった。背の高い敵役がいなくても、ブロックマシンで反復練習できる」と、同マシンの効果を評価する。
疲れ知らずのブロックマシンなら、正確に同じ動作を何度でも繰り返してくれる。しかも、現状の日本人選手ではできない高さのブロックを、である。そうした反復練習でアタック決定率を高めるのがブロックマシンの狙いだ。
現在は「ナショナルトレーニングセンター」(NTC、東京都北区)*1にあるブロックマシン。NTCでしか使えないため「ブロックマシンがあるからNTCで練習したいという選手もいる」(同氏)ほど、選手は効果を実感しているという。
スポーツ振興基本計画に基づいて、日本のトップレベルの選手の強化を図るためのトレーニング施設として2008年に開設された。正式名称は「味の素ナショナルトレーニングセンター」。
3台を協調制御して3枚ブロック再現
ブロックマシンの構成と機能をみてみよう。大まかな構成としては、床に固定された長さ9mの走行用レールと、そこに搭載された3台の走行ユニット(センター用1台、サイド用2台)から成る。走行ユニットの本体はアルミフレームを組んだ幅400mmほどで、それに1mほどのストロークを持つスライド機構が迎角60°で取り付けてある。2本の腕を持つユニット(以下、双腕ユニット)をこのスライド機構を使ってブロッカーのジャンプさながらに上方に突き出してブロック体勢を取る(図2、3)。
モーターとタイミングベルト・プーリーで駆動するこのスライド機構は、練習している選手のアタックにすばやく対応するため、始動から0.5秒でブロック姿勢を取れるようになっている。また、2本の腕は付け根(肩)に備えたモーターでそれぞれ左右に30°ずつ旋回が可能で、ブロッカーが腕を横に伸ばした姿勢も模擬できる1、2)。
走行ユニットの左右の移動は、本体下部の2台のモーターに取り付けた円形歯車と、レールに設けたラックによるラック・アンド・ピニオン機構によって実現している。走行ユニットの最大可動範囲は、センター用が3.7m、サイド用が2m。特に可動範囲が大きなセンター用の走行ユニットは高速移動が求められるため、サイド用のそれよりも高出力のモーター(5kW)を使った。これにより、センター用走行ユニットは1.1秒で3.7mを一気に移動できる。
走行ユニットに搭載した複数のモーター(走行用、スライド用)の同時制御は、モーションコントロールボードの協調制御機能を用いて実現した*2。
日本バレーボール協会の依頼を受けてブロックマシンの開発に当たった筑波大学システム情報工学系知能機能工学域教授の岩田洋夫氏は、「トップアスリートと同等の素早い動きが求められ、かつ移動スピードや選手の強烈なアタックに耐えるだけの強度も必要だった。このスピードと強度の両立が難しかった」と振り返る。しかも、軽くて丈夫なだけではなく、ブロックアウト*3の練習などのためには、人によるブロックと同じようにボールをはじき返す特性も必要となる。そこで、人の手指の形状を模擬しているブロックマシンの先端は、強度を確保しつつ人の手首や指のしなりを再現するために、ポリカーボネート(PC)の板を積層構造にしたものを採用するなどの工夫を凝らしている*4。
アタックで放ったボールがブロッカーの手に当たってからコート外に出ること。