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 「カヌー・スラロームセンター」(東京都江戸川区)は、国内初となるカヌー競技の人工コースだ。葛西臨海公園と隣接した土地に、コンクリートを使って川の形を建設した。人の手で、まるで渓流のような淡水の流れを作り出す。会場内でこの水を循環させるため、競技コースを流れ落ちた水は、再び上側流へとくみ上げる必要がある。また、その流れはより自然に近いものが良い。

 そこで活躍するのが、鶴見製作所が開発・製造した2種類のポンプだ(図1)。人の背丈の2倍以上の高さを持つ「揚水ポンプ」と、より小型な「起流ポンプ」である。

図1 カヌー競技を支える2種類のポンプ
図1 カヌー競技を支える2種類のポンプ
カヌースラロームの競技会場となる「カヌー・スラロームセンター」は国内初の人工コース(a)。水の流れを人工的に発生させるため、4基の揚水ポンプ(b)と15基の起流ポンプ(c)がある。竣工は2019年5月、写真は水を抜いた状態。(写真a:日経ものづくり、写真b、c:鶴見製作所)
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毎秒12tの水をくみ上げる

 揚水ポンプの揚程は5m弱*1。会場には4基設置してあり、本番では3基が稼働する。この3基は、合計で毎秒12tの水を送る性能を持つ。残りの1基は予備だ。

*1 ポンプが水を上げる高さ。

 水は、選手が競技開始を待つ「スタートプール」を出発し、長さ約200m、幅約10m、勾配約2%の「競技コース」を流れ落ちる。その後、「ウオーミングアップコース」*2と「フィニッシュプール」*3へと流入し、取水口に至る。この水を再び、揚水ポンプを使ってスタートプールへと戻す。

*2 競技前の練習に使うコース。長さは約180m。
*3 水の流れを止めて静水にする場所。

 揚水ポンプは一般に「水中コラム式ポンプ」と呼ばれる製品だ*4。最大直径1350mmの円筒形状で、内部は乾式かご型三相誘導電動機(400V・50Hz)とプロペラから成る。このモーターとプロペラを含めたポンプ全体が、送水管の中に納めてある。つまり、ポンプ全体が水に浸る構造だ(図2)。同社執行役員ポンプシステム部長の足立宗一郎氏によると、この構造は「ポンプの冷却を兼ねたもの」という。

*4 コラム(柱)パイプの内部に据え付ける方式のポンプ。水中に浸しているため、ポンプの始動前に「呼び水」を用いる必要がない他、地上のスペースが小さく済むといった利点がある。
図2 揚水ポンプの位置
図2 揚水ポンプの位置
揚水ポンプは、フィニッシュプールからスタートプールへと水をくみ上げる(a)。ポンプは送水管に組み込まれており、全体が水中に浸っている(b)。(写真a:日経ものづくり、図b:取材を基に日経ものづくりが作成)
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 同社はこれまで、大型のポンプを河川の排水用途などに納入してきた*5。「国や自治体、公共団体が発注するポンプの中で比べると、今回は最大級の大きさ」(足立氏)という。

*5 大雨が降った時に堤防内が浸水することを防ぐため、河川に排水する施設の排水機場などで使っている。