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突然のホンダ系部品メーカー統合劇に、関連する中堅企業は気を引き締める。単に統合を待っているわけではない。“選ばれない企業”になることへの危機感がある。今後の車両開発に乗り遅れないための期限は2025年。それまでに各社は自立を急ぐ。 先行する企業の取り組みから、生き残るための4つの条件が見えてきた。

 「ホンダからは全く知らされていなかった。寝耳に水だ」―。ある中堅部品メーカーの社長は、ホンダと日立製作所による系列部品メーカーの統合について、こう本音を漏らす。

 2019年10月に発表された、ケーヒン、ショーワ、日信工業のホンダ系部品メーカー3社と日立オートモティブシステムズが統合するというニュースは、ホンダ系の主な中堅部品メーカーにとって驚きだった(図1)。

図1 子会社の部品メーカーを統合したホンダ
図1 子会社の部品メーカーを統合したホンダ
ホンダはケーヒン、ショーワ、日信工業の3社を子会社化し、日立オートモティブシステムズと統合する方針を、2019年10月に発表した。発表の場には各社の社長が顔をそろえた。 (撮影:日経Automotive)

 関係者は「ケーヒンやショーワの社長とはよく話をする機会があったが、統合する気配は全く感じなかった」「発表後にホンダ技術研究所の所員に尋ねたものの、全く知らされていなかったようだ」と話す。統合の話は系列の部品メーカーだけでなく、内部の関係者にでさえ秘密裏に進められていたようだ。

 ただ、主要部品メーカーにとっては「やはり」と冷静に捉えざるを得ない部分もあるという。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリングサービス、電動化)や燃費規制への対応で、クルマの機能や形などが変わる大変革期を迎えているからだ。

 彼らが1つのターゲットとして見据えるのは2025年。自動車メーカーが2030年に発売する新型車の開発に乗り遅れないようにするための最終ライン。この年までに次世代技術の基盤を確立して自動車メーカーや市場から選ばれる企業にならなければ、自立した部品メーカーとして生き残れない可能性がある。

事業が好調な時こそ統合のタイミング

 ホンダが統合に向けて選んだ部品メーカーと選ばなかった部品メーカーを比較すると、違いが見えてくる。第1に、CASE時代において、部品に求められる機能や性能が異なってきている点だ。鍵は、ソフトウエアの開発にある。

 ケーヒンはパワートレーン(走る)、ショーワはステアリング(曲がる)、日信工業はブレーキ(止まる)といった基幹部品を主に扱う。これらは自動運転などを見据えた場合、部品単体で勝負することは難しい。統合制御するために機能などをソフトで連携し統合的に提案しなければ勝ち残れない。つまり、ソフトの開発が欠かせない部品だ。

 第2に、統合したホンダ系3社の直近の営業利益率は7%以上と好調であることだ(図2)。売上高を見ると、2016年度以降、ケーヒン、ショーワ、日信工業を含む主なホンダ系部品メーカーはほとんどが横ばいだ。売上高だけでは、なぜ3社が統合するのに選ばれたのかは見えにくい。

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図2 ホンダ系列の主な部品メーカーの売上高と営業利益率
図2 ホンダ系列の主な部品メーカーの売上高と営業利益率
(a)主なホンダ系部品メーカーの売上高。(b)売上高の営業利益率。各社とも売上高が大きく落ち込むことはなかった。だが、営業利益率は、過去4年の推移を見ると、比率を下げている企業が少なくない。日立オートモティブシステムズと統合予定の、ケーヒン、ショーワ、日信工業は営業利益率が7%以上と好調だった。各社の決算報告書を基に日経Automotiveが作成。(撮影:日経Automotive)
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 一方、営業利益率を見ると差は明らかだ。3社とも2016年度以降、営業利益率を持ち直している。CASEの難しさは、多くの投資が求められるのに対して、どう利益を確保するか見えにくい点である。利益率の高い会社であるからこそCASE時代に勝負をかけやすい。