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 企業情報システムを設計、開発、運用するための本質的で枯れないノウハウがある。例えば要件定義を含む業務設計やデータベース設計、運用設計などだ。こうした上流工程の楽しさを多くの技術者に伝えたいと考え、2010年から『IT勉強宴会』という一風変わった名称の勉強会を始め、2019年12月には第76回目を開催した。

 狙いは上流工程のあれこれを議論し合う「ワイガヤ」の場を企業の枠を超えて提供すること。だから宴会と名付けた。ワイガヤは本田技研工業が始めた「課題やテーマを共有しながら自由にざっくばらんに話し合い、深いところにある答えを探り出していく」方法である。

 企業情報システムの設計にもワイガヤが使える。自分の設計方針や設計結果を多くの仲間に見てもらい、話し合えば、自分の経験が仲間の経験になると共に自分も成長できる。レビューとは違い、結論を出すことに重きは置かず議論の中で気づきを得ることが重要だと思っている。

 「宴会という名前が付いているから出張申請が通らない」などクレームをいただいたこともあるがこの名称には意味も思い入れもあり変更する予定はいまのところない。

IT勉強宴会の設立趣旨
IT勉強宴会の設立趣旨
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 今回から月1回の予定でIT勉強宴会の正会員メンバーが具体的なノウハウ記事を書き、お伝えしていく。第1回目はこのNPO法人を始めた経緯と目的、10年間行ってきた活動についてかいつまんで紹介する。具体的なノウハウは次回以降に解説していくので今回は軽い気持ちで読んでいただければと思う。

2つの波がノウハウ継承を阻害した

 読者諸賢は業務設計やアーキテクチャー検討について迷った時どうしているだろうか。周りにいる先輩や後輩、しかも社内外を問わず多くの方を巻き込み、場合によっては夜遅くまでワイガヤをしているだろうか。

 筆者は1984年からコンピューターメーカー系企業で26年間SEを務めた後、大手クラウド企業に転職して3年8カ月在籍した。その後、現在の所属先に入ってもうすぐ5年になる。通算すると36年間、現役で企業情報システムを構築し続けている。だが、ある時期から「教えてもらう」ことはあっても「議論する」ことが減ってきたように感じている。

 私見だが次の2つの「波」を受けた時から議論をする雰囲気、すなわちワイガヤが失われていったのではないか。1つの波はオープンシステムである。企業でしか所有できなかった大型汎用機(メインフレーム)を使う時代から個人でも買えるPCで開発し、動かす時代がやってきた。もう1つは日本企業に目標管理制度が導入され残業規制が厳しくなったことである。

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