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 現物を確認せず在庫数量を把握でき、週ごとの必要量や発注状況が分かるようになったので担当者からとても喜ばれた。それまでは現物を見て在庫数量を確認し、注文ごとに原料発注担当者が電卓を叩き、各週の必要量を計算していた。

「ひとり情シス」を止めて独立した訳

 現在の私はフリーランスの業務システムアドバイザーとして知人の会社でITを生かした業務効率化の助言をしたり、効率化を支えるシステムの開発をしたりしている。元の会社と業務委託契約も結んでおり、自分がつくった基幹システムの保守管理も担っている。

 退社したのは2021年、新システムの導入から10年たち、入社から20年が過ぎたときだった。導入当初は毎月のように発生していたトラブルもめったに起きなくなり、大きな機能追加の要望も一段落していた。

 そろそろ潮時であり、外に出て自分の力を試してみたくなってきた。一方で別の企業の業務やシステムを理解し、良いシステムを設計、開発できるのか、という不安もあった。

 相当悩んだあげく妻に相談すると「さっさと辞めたら」と後押しされた。「生活は何とかなるから。一緒に暮らしていて、ため息を聞かされるほうがしんどい」と言われ、腹をくくった。

 転職でもよかったのだが、自分がつくったシステムを後輩が引き継げるようになっていなかったこともあり、まずは独立した。基幹システムを保守する際には、専任ではないが後輩の社員と一緒にやっており、時期が来れば手を放せるのではないかと考えている。

 身の振りについてもやもやしているとき、本連載が始まり、IT勉強宴会の佐野初夫理事長が書いた第1回目の記事を読んだ。

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 記事を読んでIT勉強宴会の存在と、『業務別データベース設計のためのデータモデリング入門』の著者、渡辺幸三さんが参加していることを知った。しかも会合は勤務先がある大阪市で開かれる。早速申し込んだ。

 初出席した際、付箋紙がたくさん付いた書き込みだらけの本を持って行った。20年来の憧れの人に初めて会うわけで緊張のあまり固まっていたが、佐野さんから渡辺さんを紹介してもらい、「この本のおかげで基幹システムをつくれました」と礼を言ったところ、笑顔で本にサインをしてくれた。

 勉強宴会に参加し、「すごい人達の集まりだ」と圧倒されつつ、個々人の力で社会と渡りあっている人たちが切磋琢磨(せっさたくま)をするやり取りに刺激を受けた。初参加の数カ月前に退社の意向を勤務先に伝えていたが、転職するにせよ独立するにせよ、こういう場があることはありがたいと思った。

 論語にいわく、「学びて思わざれば則ち罔し(くらし)、思いて学ばざれば則ち殆し(あやうし)」。外から知識を持ってきても自ら考えなければ、システムや業務を理解することはできない。自分だけで考えていても新しい知識を学ばなければ独断に陥る恐れがある。やはり勉強が必要だ。

 社外との交流に飢えている「ひとり情シス」あるいはそれに近い状況にある方にとってIT勉強宴会のような学びと意見交換の場は貴重である。基幹システムの内製にチャレンジするのであれば渡辺さんの本を一読されることを強くお勧めしたい。