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 「情シス」と聞いて読者の皆さんは何を思うだろう。企業や団体の中にある情報システム部門の印象はどうなのか。

 付き合いは多少あるけれど中のことは知らないという方が大半かもしれない。「なかなか新しいことをしない」「検討ばっかり、何も変えない人たち」、こんな辛口の反応を示す方もいるだろう。

 かつて製造業で色々なシステムをつくり、5年ほど情シス部長を務めた筆者はそういう指摘を聞くと残念に思う。

情シスの意思決定を知って気持ちよく仕事をしよう

 企業情報システムにかかわる仕事をしようとすると、開発案件でも運用案件でもほぼセットで情シスが付いてくるのが現実だ。立場によって情シスは仲間かもしれないし、敵かもしれない。どちらにしても付き合う相手だとしたら、情シスがどういう意思決定をするのかを知っておくと、今より多少なりとも気持ちよく仕事ができるのではないか。

 そこで少しでも相互理解の役に立てればとの念で情シスの立場からその仕事ぶりを紹介してみたい。筆者の狭い範囲での経験においてではあるが、たとえ一端でもそこで職務に励む者の考え方が伝われば幸いである。

IT活用を進める上で、「情シス」は仲間かそれとも敵か
IT活用を進める上で、「情シス」は仲間かそれとも敵か
(出所:PIXTA)
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 舞台を複数の事業を営む中堅製造業としよう。情報システム部があり、部長がいる。情シス部長が意思決定を迫られるシーンを挙げる。2025年までに基幹系を刷新すべきとする「2025年の崖」問題が注目を集める中、この情シス部長は主力事業の業務アプリケーション刷新を当面見送る決断を下す。その判断を紹介し、なぜそう決めたのか、部長の心の内まで記述してみる。

 シーンは3点ある。主に筆者の経験に基づくが、現役で情シス部長を務めている知人にも話を聞き、再構成している。まず状況を簡単に説明し、続いて3点のシーンと部長の意思決定をそれぞれ書く。形式は情シス部長の独白にする。

営業と工場が強い、情シスは裏方

 さほど大きい業界ではないものの、ウチの主力事業はトップシェアを誇り、利益の大半を稼ぎ出している。文字通りの大黒柱だ。

 主力事業の強みは顧客ニーズを先取りして提案する力と、ロットサイズを問わず短納期で生産する力である。提案力と生産力が業界の特性にマッチし、顧客のファーストチョイスとなっている。

 「ウチの営業と工場は強い」。これが社内の共通認識であり、残念ながら情シスは裏方だ。

 大黒柱が健在なうちに次の柱を育てようと新しい事業機会を模索している。主力事業で培ったノウハウを異なる業界に横展開しようという目論見だ。ウチの勝ちパターンは他業界に通用するのだろうか。

シーン1の課題・主力事業の業務システムをどう作り直すか

 主力事業を支えてきた業務処理システムで使っているハードウエアとミドルウエアの保守期限があと2年で切れる。アプリケーションには主力事業の成長過程で生じた歪みがある。部下のエンジニアは「これを機に作り直したい」と言ってきた。運用上、使い勝手が悪いところがあり、再開発すればもっと良いシステムになる。

 主力事業の競争力に陰りはなく、しばらくは現状の利幅を確保できそうだ。ただし大きく花開くまで経営陣はこの事業に最優先で経営資源を割いてきた。投資回収の負担は大きく、事業部長の肩には厳しい予算が課せられている。「勢いほどにカネはないよ。固定費増は勘弁して」。これが事業部長の本音だろう。