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 企業情報システムの導入プロセスで最上流に位置する「企画立案」は言うまでもないが極めて重要である。企画立案とは自社や顧客を利するための思い付きやアイデアを経営者や上長、意思決定者の判断を仰ぐに足る行動計画にまで練り上げることを言う。考え抜かれたしっかりした企画が立案されたなら、もうその時点で企ての成功は決まったようなものだ。

 では「しっかりした企画」とはどんなものか。「練り上げる」「考え抜かれた」とは具体的にどのような行為を指すのか。思い付きやアイデアはあるのにその後が伴わないという状況にあるなら、それはこれらの問いへの答えが曖昧なためではないだろうか。

 筆者は「企画立案作業の規格化」を提案したい。何かを企てる際に押さえるべきポイントには会社や案件を超えた普遍性がある。ならばそれを盛り込んだ作業手順を規定して「型」にしてしまおう。型にガイドされて作業することが「練り上げる」という行為に相当する。その成果物は「しっかりした企画」になるはずだ。

先人の英知から学ぼう

 はるか昔、古代ギリシャのアリストテレスは問題に正しく対処したいなら、まず「定常争点(stock issues)」を明らかにせよ、とした。定常争点とは問題(ill)、原因(blame)、解決法(cure)、代価(cost)である。次に4点を机上に並べて、そのうえで意思決定すべし、とアリストテレスは説いた。

 この教えは現代の「政策論争(policy debate)」に受け継がれ、定常争点は重大性(significance)、内因性(inherency)、解決性(solvency)、不利益(disadvantage)へと再定義され、それぞれの争点をどう深掘りするかまで体系化されている。

 本稿で提案する企画立案の型はそんな古くからの英知を企業情報システムの導入企画に応用したものだ。まず争点を設定し、次にそれぞれを深掘りして最終判断に至るという筋立てはそのままに、ITの投資案件に向くよう拡張してある。

 筆者は製造業において経営企画部門と情報システム部門を長く経験したが、「良かれと思う案がひらめいたら、とにかく型にはめよう」と自分にも周囲にも課してきた。型にはめることで企画の質のバラつき抑制、芽のあるアイデアの埋没回避、不完全な企画の通過阻止ができる。立案へのハードルが下がるためか、トライの数が増えるのも好ましい傾向だろう。