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 対象とする業務は製造・販売・施行の管理、データモデルに含まれるエンティティー数は140を超え、物理テーブル数は300近く、テーブルのすべての列数を合計すると2000カラムを超える。

 これだけの基幹業務システムを内製し、自力で保守している部品メーカーがある。しかも、このシステムをつくったのはそれまでプログラミングの経験がなかった女性社員1人である。

 この社員はインターネットを検索していて、たまたまローコード開発ツールの存在を知った。調べてみるとトライアル版を無料でダウンロードでき、かつチュートリアルからマニュアルまでが公開されているツールがあった。

 購入する前に細かいところまで試すことができたため、「これはいける」という感触を得て、導入を決めた。ツール・メーカーの販売パートナーに連絡してセミナーを受講し、データモデル設計のコツを学んだ。それ以降はオンラインサポートを使いながら自力でこれだけの規模まで基幹業務システムを拡張してきた。

 この会社は部品の製造と販売に加え、現場で施工もしており、業務はなかなか複雑である。業務システムを開発会社に外注してつくらせたら、かかる費用は優に数千万円はくだらないだろう。業務パッケージソフトを利用しようとしたら相当なカスタマイズが発生したはずだ。

 この部品メーカーが使っているローコード開発ツールはWagby。我々が開発し、2006年から販売を始めたものだ。Wagbyをお使いの会社の多くは1人か2人という開発者で自社の基幹業務システムを内製されている。

 業務を整理し、データモデルを設計、業務ルールを定式化した設計情報を用意し、後はWagbyで自動生成する。このやり方により数人で業務システムを内製できる。実際、開発者の多くはプログラミング言語やWeb技術に精通しているわけではない。

 自分たちの業務の仕組みが反映されたデータモデルを大切にしていきたい。データモデルがブラックボックスになるERP(統合基幹業務システム)パッケージソフトに自社の業務を合わせることには抵抗がある。こう考える中堅・中小企業は少なくない。そうした企業に焦点を合わせることで、沖縄で生まれた零細ソフト会社の我々はツール・メーカーとして生き残れた。

ひたすら情報を発信、問い合わせを待つ

 「この広い東京で無名の我々が、しかも日本にあまりなじまない高生産性の開発ツールをどうやって売っていくのか」

 2006年に沖縄から東京に出てきた私たちはこう自問自答した。沖縄で起業し、地元で情報システムの受託開発をしていたがなかなかうまく行かなかった。今でいうところのローコード開発ツールをつくり、それを自社内で使い、なんとか受託開発を黒字でこなせるようになったが、いかんせん沖縄県内だけでは市場が狭かった。

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