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 宇宙ビジネスが進化している。発信した電波の反射を利用する「合成開口レーダー」(SAR:Synthetic Aperture Radar)。悪天候で雲がかかっていても、深夜で日が差さない場所でも地表を観測できる電波の眼だ。技術革新で小型化が進んだSARを活用した新たな人工衛星ビジネスが世界各国で勃興しているのだ。連載第5回は、第4回に引き続き日本の宇宙ベンチャー企業Synspective(シンスペクティブ)の取り組みを紹介する。

 これまで地球観測衛星の取得データは「何かが映っているが、何が映っているかは分からない」などといわれてきた。宇宙から地球上を観測すると画像が得られる。では、そこに映っているものが実際は何なのか——それは現地に行って調べなければ分からない。

 「現地の情報」を地球観測分野では「グラウンドトゥルース」という。グラウンドトゥルースの情報があって初めて、「画像から抽出した情報が何を意味しているか」を知ることができる。

グラウンドトゥルースの例。2017年にグアテマラ共和国で発生した森林火災の状況を、米地質調査所(USGS)が運用する地球観測衛星「ランドサット8」で撮影した画像。森林火災前(左)と森林火災後(右)では、確かに変化が起きているが、どこが森林火災で樹木が焼失した場所なのかは現地に行ってグラウンドトゥルースを調べないと分からない。逆に一度グラウンドトゥルースを入手できれば、それを使って衛星の撮影した画像を解析し、地球全体の広範な地域の情報を入手できる。(出所:NASA)
グラウンドトゥルースの例。2017年にグアテマラ共和国で発生した森林火災の状況を、米地質調査所(USGS)が運用する地球観測衛星「ランドサット8」で撮影した画像。森林火災前(左)と森林火災後(右)では、確かに変化が起きているが、どこが森林火災で樹木が焼失した場所なのかは現地に行ってグラウンドトゥルースを調べないと分からない。逆に一度グラウンドトゥルースを入手できれば、それを使って衛星の撮影した画像を解析し、地球全体の広範な地域の情報を入手できる。(出所:NASA)
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 人工衛星を上げて地球表面を撮像すれば、それだけで有用な情報を得られるわけではない。衛星データと並行してグラウンドトゥルースを集め、解析のノウハウを蓄積しないと、画像を解析して有用な情報を得られない。人工衛星なら地球全域を一気にカバーできるが、グラウンドトゥルースは実際に現地へ行かないと収集できない。

 衛星データ+グラウンドトゥルース+解析ノウハウで、やっと有用な情報が得られる——。このように大変に手間が掛かるので、地球観測衛星は1980年代以降、何回も民営化・商用化の動きがあったにもかかわらず、基本的に民間ではなく国が開発・運用資金を出すのが一般的だった。

 その状況が、2013~14年ごろから急速に変化した。ビッグデータとディープラーニングの出現だ。ビッグデータの有用性が認識されるようになり、多くの企業がその蓄積を始めた結果、グラウンドトゥルースとして使えるデータが一気に増えた。

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