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 宇宙ビジネスが進化している。発信した電波の反射を利用する「合成開口レーダー」(SAR:Synthetic Aperture Radar)。悪天候で雲がかかっていても、深夜で日が差さない場所でも地表を観測できる電波の眼だ。技術革新で小型化が進んだSARを活用した新たな人工衛星ビジネスが世界各国で勃興しているのだ。連載第6回では日本の宇宙ベンチャー企業QPS研究所(iQPS)の取り組みを紹介する。

 「小型SAR衛星によるコンステレーション構築」という、参入者がほとんどいない“ブルーオーシャン”に参入したのが日本の衛星ベンチャー企業であるQPS研究所(以下、iQPS、福岡市)だ。

iQPSが打ち上げたSAR衛星「イザナギ」。写真はパラボラアンテナを展開した状態。(出所:iQPS)
iQPSが打ち上げたSAR衛星「イザナギ」。写真はパラボラアンテナを展開した状態。(出所:iQPS)
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 大型の光学観測衛星と大型のSAR*1衛星は1970年代以降、世界各国が開発を続け、国家機関の衛星が数多く運用されている。2000年代以降は民間の衛星も運用されており、新規参入者からするとライバルは多い。

*1 SAR:合成開口レーダー。レーダーを使って地表を電波で照射し、その反射波から画像を作成するレーダー。

 小型の光学観測衛星では10年ごろから、米プラネット・ラボ(Planet Labs)などの宇宙ベンチャーが世界各地で活動を開始しており、衛星コンステレーション構築とビジネス展開に向けて動いている。新規参入者が、既に実績を出している先行者に追いつき、追い越すのは徐々に難しくなりつつある。

 この分野は欧州が07年以降、先行して大型SAR衛星のデータを販売していた。米商務省はSAR衛星の取得データの商用利用に制限をかけていたので参入者は少なかった。しかし、欧州の動きを受けて米国も15年10月にSAR衛星データの商用利用を解禁した。

 当時、iQPSは50kg級の小型衛星開発の技術的蓄積を発展させていた。この技術を発展させて、レーダーを搭載できる100kg級の小型衛星を開発すれば、小型SAR衛星を開発できるのではないか。小型SAR衛星によるコンステレーション構築というブルーオーシャンで先行者利益を享受できるのではないか。

すべての準備を終えてロケット打ち上げ場があるインド東岸のサティシュ・ダワン宇宙センターへの出荷を待つiQPSの小型SAR衛星「イザナギ」。(出所:QPS研究所)
すべての準備を終えてロケット打ち上げ場があるインド東岸のサティシュ・ダワン宇宙センターへの出荷を待つiQPSの小型SAR衛星「イザナギ」。(出所:QPS研究所)
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 iQPSは実際、19年12月11日にSAR衛星「イザナギ」の打ち上げに成功した。ライバルである日本のSynspective(シンスペクティブ、東京・江東)が、SAR衛星を使って収集したデータなどの解析部門を持ち、顧客へのソリューションの提供を目指すのに対し、iQSPは衛星コンステレーションの構築と維持・運用、データ取得に特化。現在は、世界主要都市の高頻度の撮像によるビジネス展開を模索している。

 しかし、ここに至るまでにはSARとして利用するのに十分な規模のアンテナを100kg級の小型衛星に搭載するための技術開発という大きな課題が立ちはだかっていた。