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九州発の宇宙産業の基盤確立を目指す

 iQPSの設立は05年。九州大学名誉教授の八坂哲雄氏と同じく九州大学名誉教授の桜井晃氏、三菱重工業でロケットを開発してきた技術者の舩越国弘氏の3人が共同で設立した。

iQPS社内で地球観測衛星の市場性を四区分で検討した結果、SAR衛星コンステレーションが浮上した。(出所:QPS研究所)
iQPS社内で地球観測衛星の市場性を四区分で検討した結果、SAR衛星コンステレーションが浮上した。(出所:QPS研究所)
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 目的は、九州地域での宇宙産業の基盤確立を通じた日本の宇宙産業の底上げだ。大型通信アンテナなどの宇宙構造物を研究し、日本のスペースデブリ(宇宙ゴミ)研究で先駆的役割を果たした八坂氏。日本における無人航空機研究のパイオニアである桜井氏。メーカーの立場でロケット開発に携わった技術者の舩越氏が、自分達の経験と蓄積を生かして、九州地域の宇宙産業を盛り上げようと考えての船出だった。

 3人は九州地域の中小企業を巡り、九州大学と連携して共同研究や受託開発などの活動を展開した。14年には同社と九州大学を中心に、九州工業大学、佐賀大学、鹿児島大学、そして九州地域に本拠を構える地元企業が参加した技術試験衛星「つくし(QSAT-EOS)」(重量50kg)を打ち上げた。

 転機は13年に訪れた。九州大学で宇宙工学を専攻した大西俊輔氏が「ぜひとも九州で宇宙産業を盛り上げたい」と入社したのだ(現在は同社代表取締役社長)。大西氏は当時、同社の中で最年少だった。八坂氏は、「若い人が入社したので、我々ベテランの知見を生かした受託開発とは別に、ベンチャー企業としてきちんとした将来計画を立ち上げ、会社の成長を目指す必要が出てきた」と振り返る。

 どのようなプロジェクトで会社を伸ばしていけばいいのか。議論の中から浮かび上がったのが、SAR衛星コンステレーションだった。同社としては、九州大学との継続的な協力で蓄積してきた50kg級小型衛星の技術を生かすのが一番の近道となる。「光学観測とレーダー観測、大型衛星と小型衛星という4区分で地球観測衛星の将来性を考え、SAR衛星コンステレーション構築という結果が出た」(大西社長)という。

松浦 晋也(まつうら・しんや)
ノンフィクション作家/科学技術ジャーナリスト
松浦 晋也(まつうら・しんや) 宇宙作家クラブ会員。1962年東京都出身。慶応義塾大学理工学部機械工学科卒、同大学院政策・メディア研究科修了。日経BP社記者として、1988年~92年に宇宙開発の取材に従事。その他メカニカル・エンジニアリング、パソコン、通信・放送分野などの取材経験を経た後、独立。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。近著は『母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記』(日経BP社)(写真:大槻 純一)