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 宇宙ビジネスが進化している。発信した電波の反射を利用する「合成開口レーダー」(SAR:Synthetic Aperture Radar)。悪天候で雲がかかっていても、深夜で日が差さない場所でも地表を観測できる電波の眼だ。技術革新で小型化が進んだSARを活用した新たな人工衛星ビジネスが世界各国で勃興しているのだ。連載第8回では第7回に引き続き、日本の宇宙ベンチャー企業QPS研究所(iQPS)の取り組みを紹介する。

 QPS研究所(iQPS)は、確実性と将来性のあるビジネスモデルとして「世界主要都市の高頻度撮像」を選んだ。

 これまでにiQPSが得た資金で実施できるのは、先行試験衛星の「イザナギ」と「イザナミ」の2衛星の開発と運用までだ。2024年に36機のSAR衛星による本格運用開始を実現するには、これら2衛星の運用実績を積み重ねるとともに、投資家が納得できるビジネスモデルを提示し、さらなる出資を募る必要がある。そのビジネスモデルが、「世界主要都市の高頻度撮像」だった。

iQPSの衛星は軌道傾斜角45°の軌道面4つに、各9機の衛星を配置する。
iQPSの衛星は軌道傾斜角45°の軌道面4つに、各9機の衛星を配置する。
(出所:QPS研究所)
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 36機の衛星は、それぞれ傾きの方向が異なる軌道傾斜角(地球の赤道からの軌道面の傾きの角度)45°の軌道4つに9機ずつ配置する。この軌道では、北緯・南緯45°以上の高緯度地域の撮影はできない。その代わり45°以下の中緯度、低緯度地域は一層高頻度で撮影できる。

 「世界の大都市の大部分は、緯度45°以下の中緯度・低緯度地域に集中している。これらの大都市とその近辺を最短で10分間隔という高頻度で撮像して、地表の撮像データの需要を掘り起こしていく。高頻度撮像は、特に移動する船舶などの監視で有利になるだろう」。同社取締役・最高執行責任者の市來敏光氏は、こう力説する。

 緯度45°以下の中緯度・低緯度地域の大都市に集中するのは、他社との競合を避ける意味もある。高緯度地域の観測は、既にフィンランドアイスアイ(ICEYE)が先行している。

ICEYEが最初に打ち上げたSAR衛星「ICEYE X1」。横方向に大きく拡げているのがSARアンテナ。
ICEYEが最初に打ち上げたSAR衛星「ICEYE X1」。横方向に大きく拡げているのがSARアンテナ。
(出所:ICEYE)
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 同社は2018年1月から「ICEEYE-X」衛星の打ち上げを開始。SAR衛星コンステレーションを構築していた。2019年10月からは衛星5機態勢で撮像データなどを販売。同社の衛星は、その名の通り極域の雪氷の観測も目的に入れていて、極域を観測できる軌道を巡っていたのだ。