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 政府が設置した「首里城復元に向けた技術検討委員会」での議論が始まり、防火対策の強化などについて検討が本格化している。建築防火の専門家で、検討委員会で委員を務める長谷見雄二・早稲田大学教授に首里城復元に向けた課題を聞いた。長谷見教授は、首里城のみならず文化財における防火対策の考え方に問題があると指摘した。

「首里城復元に向けた技術検討委員会」で委員を務める長谷見雄二・早稲田大学理工学術院教授(写真:日経アーキテクチュア)
「首里城復元に向けた技術検討委員会」で委員を務める長谷見雄二・早稲田大学理工学術院教授(写真:日経アーキテクチュア)
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建築防火の専門家として、今回の火災をどのように見ていますか。

 首里城は指定文化財ではありませんが、正殿に関しては忠実に木造で復元されていました。指定文化財を含めてそういった建物は火災が発生した場合、全焼してしまう可能性が非常に高い。文化庁によると、1950年の文化財保護法の成立後、文化財の火事は約80件発生していて、うち全焼して指定解除になったものが約10件あります。つまり全焼率は約20%。一般の建物と比較しても高い数字です。

なぜ全焼してしまう可能性が高いのでしょうか。

 「防火対策が十分に整備されていない木造建築物が多い」ということが原因の1つにあります。「焼失しないように火事が起こらないようにしよう」と考えることは正しいのですが、実態が伴っておらず、対策の見直しはなされてこなかった。文化財防災の考え方に問題があると言わざるを得ません。

具体的にはどういった考え方が問題なのでしょうか。

 文化財と言えば判を押したように「空気管式の熱感知器」を設置しているのですが、必ずしも効果があるとは限りません。というのも、多くの施設で正常に作動する条件を大幅に逸脱した設置をしているからです。

 文化財では基本的に、固定した消火設備などは嫌われます。近代的な設備を設置する場合でも「いかに見えなくするか」という考えに固執してしまっている。感知器を見えない場所に設置するということは煙が触れにくくなるということなので、火災時に温度が上がりにくくなり作動の遅れにつながります。

首里城正殿にも空気管式の熱感知器が設置されていましたが、火災時には防犯用の人感センサーが先に作動しています。

 美ら島(ちゅらしま)財団などの会見によると、人感センサーが作動した時点で正殿内に煙が充満していたとのことでした。正殿でも熱感知器を目立たないように設置していたのではないかと考えられます。

 正常に作動しない感知器や防火設備でも「設置してある」ということは管理側に安心感を与えてしまうため、むしろ逆効果になります。建築物と防火設備の組み合わせの仕方を根本的に考え直す必要があります。

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