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 政府が設置した「首里城復元に向けた技術検討委員会」での議論が始まり、防火対策の強化などについて検討が本格化している。消防や都市防災の専門家で、検討委員会で委員を務める関澤愛・東京理科大学研究推進機構総合研究院教授に首里城復元に向けた課題を聞いた。関澤教授は防火設備の検討だけでなく、自主防災の意識付けが必要だと指摘した。

「首里城復元に向けた技術検討委員会」で委員を務める関澤愛・東京理科大学研究推進機構総合研究院教授(写真:日経アーキテクチュア)
「首里城復元に向けた技術検討委員会」で委員を務める関澤愛・東京理科大学研究推進機構総合研究院教授(写真:日経アーキテクチュア)
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首里城再建に向けて、どういった対策が必要と考えていますか。

 火災後に指定管理者の美ら島(ちゅらしま)財団などが発表した資料によると、防犯用の人感センサーが発報し、警備室があった奉神門(ほうしんもん)から警備員が正殿に駆けつけたときには既に煙が充満していたとのことでした。今回の火災で、一度火災が拡大すると火の勢いよりも先に煙が充満するということが改めて分かった。

 煙が充満して視界が確保されていない中での消火活動は極めて困難で、無理に消火活動を行うと逃げ道が分からなくなる危険性があります。「火災の早期発見・初期消火のために、薄い煙でも作動する煙感知器を設置すべきだ」と声を大にして言いたい。

焼失した正殿にはスプリンクラーが設置されていませんでした。

 首里城には放水銃やドレンチャーが設置されていましたが、これらは火元から発生する輻射熱(ふくしゃねつ)や火の粉の飛散による周囲への延焼を防ぐものです。再建に向けては、今まで以上に屋内消火設備を重視すべきです。人が屋内に入って消火活動できないことも想定して、スプリンクラーなどの自動消火設備の設置が不可欠でしょう。

 しかし、「スプリンクラーを設置しているから安全だ」と勘違いしてはいけません。スプリンクラーは、消防隊が到着するまでに火災が拡大することを防ぐためのものです。役割的に「火災抑制装置」という捉え方の方がいい。正殿のような区画も少なくて天井も低い空間であれば効果を期待できますが、神社のような小屋裏空間の大きなものでは効果を発揮できない場合が多いです。建物の空間特性に見合った、適材適所の防火設備が必要です。