建築生産の革新を掲げ、2018年に「鹿島スマート生産ビジョン」を打ち出した鹿島。同ビジョンを初適用した名古屋の自社開発オフィスビルが19年9月に竣工した。実際の建設現場で実証を重ねた後、新たなモデル現場に位置付けた神奈川県内の複合ビルでは、さらに踏み込んだ取り組みが進む。鹿島が現場導入を推進する「建設テック」について、2回に分けて紹介する。
高所作業車やフォークリフト1台1台、技能者や技術者1人ひとりの現場内での動きを、工事事務所のモニターに映し出されたBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)モデル上でリアルタイムに把握する――。
鹿島が、IoT(モノのインターネット)技術を活用した資機材位置・稼働モニタリングシステム「K-Field(ケイ・フィールド)」の現場適用を進めている。完成すれば延べ面積8万m2超となる神奈川県内の複合ビルの建設現場に、最新バージョンのソフトウエアを導入。地上の鉄骨建て方などが始まる20年4月以降に運用を開始する計画だ。このオフィスビルは、鹿島が18年に公表した「鹿島スマート生産ビジョン」を全面適用する新たなモデル現場の1つだ。
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ケイ・フィールドの仕組みはこうだ。建設現場の“動産”である仮設資機材、技能者や技術者に小型の発信機(ビーコン)を、現場内の各層に受信機(ゲートウェイ)をそれぞれ取り付け、Wi-fiを通じて取得したデータをクラウド上のサーバーに送る。工事事務所のモニタリングシステムでは、現場内のモノと人の状況を、遠隔から現場にいるかのように管理できる。現場内で作業するロボットの稼働状況などもモニタリングが可能だ。
人の滞留状況を「ヒートマップ」で示す機能も加えた。これらのデータは、現場内の安全管理や工程管理などを改善するための分析にも生かす。
パイロット現場の実証生かしブラッシュアップ
鹿島は、ケイ・フィールドや「現場内モニタリングシステム」、各種ロボットの試験適用を19年9月に竣工した「名古屋伏見Kスクエア」で完了させている。Kスクエアは、自社開発ビルであることを生かし、計18項目もの技術やシステムを集中導入した鹿島スマート生産ビジョンのパイロット現場だ。
神奈川県内のモデル現場で導入しているケイ・フィールドや工事事務所のモニタリングシステムは、Kスクエアの現場で導入していたシステムの進化版に当たる。ケイ・フィールドは2次元から3次元に、工事事務所のモニタリングシステムは、画面の切り替え機能の充実を図るなど、Kスクエアでの適用を踏まえて、それぞれブラッシュアップした。
Kスクエアで所長を務めた鹿島の木村友昭氏は、ケイ・フィールドの導入メリットについてこう話す。「資機材の位置が一目で分かるため、どこにあるのか、誰が使っているのか分からなくて探し回る時間や、使える資機材を活用せずに遊ばせてしまうといったコストの無駄が省ける。リース品の毀損・滅失などの管理にも有効だ」。