足元一面に整然と並ぶ鉄筋の上を、2台のロボットが交差部を結束しながら黙々と進む──。香川県・小豆島の「春日堂新第2工場」の建設現場だ。同工場の設計・施工を担う大和ハウス工業が、鉄筋結束ロボット「トモロボ」を適用した。
トモロボは、市販の鉄筋結束用の手持ち電動工具2つを本体の側面に取り付けて使う。縦筋の上に車輪をセットして本体の電源を入れ、「全結束」「チドリ結束」などの結束パターンを選択してスタートボタンを押すと、自動で走行を始める。磁気センサーで交差部を検知するため、横筋のピッチの変化にも対応が可能だ。ロボットが作業できない柱周りなどは技能者が結束作業する。販売元の建ロボテック(香川県三木町)の試算では、人による従来の結束作業の80%以上を削減できる。
小豆島の現場では、オペレーター1人と技能者1人が2台のロボと協働して床鉄筋の結束作業を担当。1階床の一部、約800m2を2時間弱で仕上げた。ロボット2台とオペレーター1人で3人分の仕事をこなす。同現場でオペレーターを務めた都島興業(香川県さぬき市)の國方英雄工務主任は、「操作方法はシンプルだ。慣れてくれば、1人で4台程度を管理できる」と話す。
センサーが鉄筋の端を検知すると自動で停止するので、隣の鉄筋への横移動は人が支援する仕様だ。大和ハウス工業香川支店建築工事課の藤川博喜課長は、「横移動に人が介在しなくて良くなるのが理想的だ。夜間にロボットを稼働させ、翌日の朝から本作業に取りかかれれば、大規模な物流倉庫などでより導入効果が見込める」と話す。
建ロボテックでは2020年内の完成を目指し、横移動を支援するロボットの開発を進めている。
専門工事会社こそロボット活用を「自分ごと」に
トモロボの開発を推進したのは、専門工事会社だ。鉄筋工事を専門とする都島興業の眞部達也代表が、建設工事の省力化工法の開発・コンサルティングを手掛ける建ロボテックを立ち上げ、サンエス(広島県福山市)と共同開発した。
大手建設会社が建設ロボットの開発や現場実証を急ぐなか、建ロボテックは19年10月にトモロボの量産モデルを発売。搭載する機能を鉄筋結束に絞り、本体価格は220万円(税別)とした。
「ロボットで自動化できる単純作業は鉄筋結束にとどまらない。躯体工事だけで言えば、25年までに40%の生産性向上は可能だと考えている」。そう語る都島興業と建ロボテック代表の眞部達也氏に、現場の生産性向上の実現に向けた思いを聞いた。次ページでは、同氏の談話を紹介する。