全1591文字
PR

 東日本大震災から9年がたつ。死者・行方不明者を1200人以上出した岩手県大槌町では、巨大津波を防ぐための防潮堤と水門の復興工事が進む。4Kカメラで撮った映像に様々な情報を組み合わせる、新たな現場管理手法を試行中だ。

 4つの4Kカメラが現場の両端にある水門の上から、目を光らせる。そこで取得した映像を現場管理に生かそうと試行しているのが、安藤ハザマや富士ソフト、日本マルチメディア・イクイップメント(東京・千代田)など5者が組むコンソーシアムだ。

右の大槌川には水門を新設した。左の小槌川の水門は再築。その間をつなぐように長さ約300m、高さ14.5mの防潮堤を復旧する。施工者は安藤ハザマ・植木組・伊藤組土建・南建設JV。2020年1月に撮影(写真:安藤ハザマ・植木組・伊藤組土建・南建設JV)
右の大槌川には水門を新設した。左の小槌川の水門は再築。その間をつなぐように長さ約300m、高さ14.5mの防潮堤を復旧する。施工者は安藤ハザマ・植木組・伊藤組土建・南建設JV。2020年1月に撮影(写真:安藤ハザマ・植木組・伊藤組土建・南建設JV)
[画像のクリックで拡大表示]

 現場管理への映像の生かし方を考えたときに、真っ先に浮かぶのが「監視」だ。ただ、この現場ではその使い道だけにとどまらず、リアルタイムで撮った映像に様々な情報を加えることで、映像活用の高度化を図っている。その一例が3次元設計データの重ね合わせだ。

カメラの映像に3次元設計データを組み合わせた。設計データと現況を視覚的に比較できる(資料:映像進捗管理システム開発コンソーシアム)
カメラの映像に3次元設計データを組み合わせた。設計データと現況を視覚的に比較できる(資料:映像進捗管理システム開発コンソーシアム)
[画像のクリックで拡大表示]

 防潮堤の盛り土の完成形が、1m間隔の等高線で表示される。設計図通りに工事を進めているかどうかを直感で把握できる。現場への出入りが多い協力会社の職人などにとって、「現在の進捗が分かり、完成形をイメージしやすい」と好評だという。

 映像上で、簡易測量する機能も盛り込んだ。「精度は粗いものの、現場でのちょっとした確認のために、職員がわざわざ足を運んで測量する必要がなくなる。現場へ行く回数が確実に減った」と、安藤ハザマ建設本部土木技術統括部地盤グループの木付拓磨主任は話す。

画面上での面積算出が可能(資料:映像進捗管理システム開発コンソーシアム)
画面上での面積算出が可能(資料:映像進捗管理システム開発コンソーシアム)
[画像のクリックで拡大表示]

 例えば、これまでは日々の資材搬入のたびに置き場所の面積を確認する必要があり、職員2人が現場へ出向き、測っていた。移動を含めて30分くらい要した作業が、パソコンでわずか数秒で終わる。現場へこまめに行かずに済む。

 映像には3次元の施工データも表示できる。この現場では、盛り土の転圧データなどを重ね合わせている。

転圧データを画面上に重ね合わせる(資料:映像進捗管理システム開発コンソーシアム)
転圧データを画面上に重ね合わせる(資料:映像進捗管理システム開発コンソーシアム)
[画像のクリックで拡大表示]

安藤ハザマは大槌川水門付近の防潮堤工事の現場で、自動運転システムと同社独自の品質管理システムを組み合わせた「次世代盛り土施工管理技術」を試行中だ。写真は2020年2月4日に開いた見学会で、手を放して振動ローラーの自動運転の機能をアピールしている様子(写真:日経コンストラクション)
安藤ハザマは大槌川水門付近の防潮堤工事の現場で、自動運転システムと同社独自の品質管理システムを組み合わせた「次世代盛り土施工管理技術」を試行中だ。写真は2020年2月4日に開いた見学会で、手を放して振動ローラーの自動運転の機能をアピールしている様子(写真:日経コンストラクション)
[画像のクリックで拡大表示]

 クラウドを介して、遠隔地にいる発注者も映像を見られるようにした。「現場に行かなくても大体の施工数量が分かるため、出来高の支払額のおおよその根拠にもなる」。岩手県沿岸広域振興局土木部復興第一チームの野口学総括主査は、こう話す。現場での立ち会いにもタイミング良く来場できるので、手待ち時間のロスを減らせる。

 安藤ハザマの木付主任は言う。「受発注者がお互い同じ映像を見て、現状を認識できる。コミュニケーションの向上につながるのではないか」