国土交通省北陸地方整備局が進める総事業費1200億円に上る大河津分水路改修工事の現場で、前代未聞の立体映像を使った協議が行われている。主導するのは小柳建設(新潟県三条市)だ。遠方にいても協議に参加できる他、対面式の従来型の協議と比べて建設的な意見を引き出せるメリットもある。
工事における受発注者の協議は、起こりそうな問題を事前に共有し、解決策を話し合うために実施する。色々な資料や写真を基に、問題点などを説明しなければならない。
一般に「横断面図がどうなっているのか」「問題の箇所の写真を見たい」と話すなかで、複数の書類や写真を用いる。情報がうまく整理できないために、やり取りをした揚げ句、議論が平行線をたどることは少なくなかった。
一方、小柳建設が日本マイクロソフトと共同で推進する「Holostruction(ホロストラクション)」では、協議にかさばる資料は不要になる。必要なのは、頭に装着するマイクロソフト製のHoloLens(ホロレンズ)だけだ。この魔法のレンズを通して、現実の空間に3次元ホログラムなどを映し出す。試験導入した大河津の現場では、山地の一部がひさしのように突き出ており、施工しづらいことが照査段階で判明。設計協議において、問題点と変更案をホログラムで説明した。
「3次元モデルを製作しても、パソコン画面に映したり紙などに出力したりして見ると2次元になる。『3Dを3Dで見たい』という要望に応えたのがホロストラクションだ」と、小柳建設建設事業部の川﨑雅人技術部長は説明する。
協議に参加した発注者からは、好感触を得た。「話を聞きながら3次元で視覚的に問題点を確認できたので、分かりやすかった。ホロレンズがなければ理解に時間がかかったはずだ」と、国交省北陸地整信濃川河川事務所の田代厚・大河津出張所長は言う。
加えて、「3次元で見ると我々もイメージが湧き、改善策を練りやすくなる」(田代出張所長)とも。理解を早めるだけでなく、建設的な議論の展開にもつながるわけだ。この現場では、スムーズに施工承諾を得られ、手戻りなく工事を進めている。