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Uber一色に染まりつつある次世代のUAM(Urban Air Mobility)業界。だが、米国や欧州、中国といった各地で、独自のeVTOL機を軸に、UAMサービスまでを構築する動きがある。数十億円~100億円ほどの投資を得た新興企業やAirbusといった航空機大手だ。遅れていた日本勢も急ピッチで後を追う。

 自律飛行可能な電動の垂直離着陸(eVTOL)機で、安価なモビリティーサービスを提供する。そんな目標に向かってまい進する新興企業にあって、その「先頭集団」で活発に動いているのがドイツVolocopterである(図1)。同社は2012年創業で、ドイツDaimlerや中国の浙江吉利控股集団(Zhejiang Geely Holding Group)、米Intel Capitalなどから出資を受けている。その総額は8500万ユーロ(1ユーロ120円換算で102億円)に達した。2025年までの商用サービス開始に向けて急ピッチで開発を進めている。

図1 Uber対抗の企業が続々
図1 Uber対抗の企業が続々
航空機大手から新興企業まで、Uberのエコシステムに入らない主要なeVTOL機メーカーを示した。いずれも、機体開発だけでなく、モビリティーサービスを自ら手掛けることを視野に入れている。(画像:Flyerは日経クロステックが撮影、それ以外は各社)
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 Volocopterの戦略はUberと大きく異なる。例えば、18個の回転翼を搭載したフル電動型の機体は2人乗りだ。これはUber Airの5人乗りの機体に比べて少ない。それでも、「電動機のため運用コストは安く、その結果、運賃を抑えられる」と、同社 CEOのFlorian Reuter氏はみる注1)。2人乗りの機体にしたのは、騒音を抑えるため。3人乗り以上の機体だと、「都市部で飛行できるほど静音化にするにはハードルが高い」(同氏)と判断した。

注1)例えばニューヨーク市マンハッタン区で、約100米ドルと、ヘリコプターの半額以下の運賃にしても「利益を出せる」(Reuter氏)と考えている。

 機体への電力供給方法も異なる。Uberが急速充電を志向するのに対して、ボロコプターは電池交換で実施する。約5分での交換を目指す注2)

注2)急速充電に関して「満充電までに10分以上かかり、ユーザーは長く感じる。電池寿命も短くなる」(Reuter氏)と否定的な見方だ。

シンガポールでデモ飛行

 創業以来、順調に実績を積み上げてきたVolocopterは、2019年に機体とインフラの面で大きく進展した。例えば、同年8月にエアタクシー向け商用機「VoloCity」を発表した。従来の試験機「2X」を基に開発した。VoloCityは、欧州航空安全機関(EASA)がVTOL機向けに2019年7月に策定した安全基準(「SC-VTOL」)を満たすという注3)。巡航速度は最高時速110kmで、航続距離は35kmである。2Xではなかった荷物スペースを設けた。

注3)安全性向上のために2Xで導入した冗長性も踏襲しているようだ。2Xの推進系では、回転翼を18個にした上、2次電池パックを9個、フライトコントローラーを複数個搭載しており、仮にどれかが故障しても、「飛行できるようになっている」(Reuter氏)。

 その後、2019年10月には、シンガポールで開催された交通システムなどに関するイベント「26th ITS World Congress」で飛行デモに加えて注4)、英Skyportsと共同で開発した離着陸場「VoloPort」のコンセプトモデルを披露した(図2注5)

注4)デモは2019年10月22日(現地時間)に実施した。
注5)インフラ関係ではこのほか、2019年2月に、フランクフルト空港を運営するFraportとエアモビリティー向けのインフラの構築で協業すると発表した。
図2 シンガポールの空を舞う
図2 シンガポールの空を舞う
Volocopterは、2019年10月にシンガポールで開催された「26th ITS World Congress」で、eVTOL機の試作機を用いた飛行デモを見せた(a)。招待客や報道機関などが見つめる中、パイロットが搭乗した機体が垂直に離陸し、およそ140秒間、1.5kmの距離を飛行したのちに着陸した(b)。高度は約40mで、速度は約30ノット(時速55.56kmほど)だったという。(撮影:日経クロステック)
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