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 ネットワンシステムズや日鉄ソリューションズ、東芝ITサービスをはじめ、少なくとも9社の関与が明らかとなった循環取引。首謀者はネットワンで東日本第1事業本部第1営業部営業第1チームのシニアマネージャー(当時)を務めていたX氏である。X氏が実在する案件をベースに、中央省庁を最終顧客とした架空の商流取引をでっち上げ、売り上げや利益を水増ししていた。

 不正の手口はこうだ。

 X氏はIT業界で一般的な「直送」と呼ばれる取引を悪用した。物品を最終顧客が指定した場所に仕入れ先から直接納品する取引形態である。取引を仲介する企業は付加価値を提供せず、手数料を上乗せするだけのケースもある。

 直送は現物をやり取りしなくて済むため、入荷や発送の手間を減らせる半面、不正の温床になりやすい面がある。これまでもIT業界で度々問題になっており「悪癖」が再び顔を出した格好だ。

 話を戻して一例を挙げると、X氏はまず実在した案件をベースに、追加発注などに見せかけた架空の案件Aを作り上げる。注文書を偽造し、架空の案件Aについて、東芝ITサービスに発注をかける。

 X氏の指示を受け、東芝ITサービスは日鉄ソリューションズに、日鉄ソリューションズはネットワンに次々と物品を発注し、商流はぐるりと一周する。X氏は再び、Aの名目を変更して別の架空の案件Bにすり替え、偽造した注文書を東芝ITサービスに送る。それ以降は案件Aと同じ商流をたどるーー。こうした循環を繰り返していく。

循環取引を主導したX氏の手口の例。案件をすり替え、架空取引を回し続けた
循環取引を主導したX氏の手口の例。案件をすり替え、架空取引を回し続けた
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 不正の発覚を防ぐため、X氏は両社の担当者に対して案件の詳細を伏せていた。X氏は「サイバーセキュリティーの関係で商流など、どこに何を収めるのかは話せない」といった説明をし、件名を「省庁向け物品等一式」などと曖昧にしていた。

疑う部下を叱責して隠蔽

 とはいえ、各社による架空取引は4年以上にわたり、売り上げ規模は累計1000億円超に上る。これだけ大がかりな架空取引をX氏だけで回すのは不可能だ。X氏の指示を受け、実際に手を動かしていたのがネットワンの営業第1チームの部下たちだった。

 例えば本来なら仕入れ先が作成する見積もりの内訳明細を、X氏の部下が代わりに作っていた。仕入れ先からは見積書の頭書だけを受け取り、部下が作成しておいた内訳明細を後ろに付けて、仕入れ先からの見積書として扱っていた。

 架空取引の案件が内部監査や監査法人による監査の対象になると、部下が必要な書類を準備した。顧客(受注先)の担当者に依頼し、検収書や納品の事実が確認できるメールの返信などを取得するといった具合だ。X氏は監査法人に対する回答案まで部下に作らせていた。

 ネットワンでは見積金額が基準以上になると、顧客(受注先)に見積書を出す前に事業本部長の決裁が必要だ。上長らに来期の案件の見通しなどを説明する場も設けられている。通常は営業担当の一般社員が説明するが、架空取引に関わる案件はシニアマネージャーのX氏自らが説明していた。

 部下らも疑問を抱かなかったわけではない。見積もりの総額があらかじめ決まっていたり、営業担当者も知らない案件が存在していたりしたためだ。しかし、X氏は疑問を抱く部下たちに対して、事実関係を明かさず、叱責するなどして従わせていた。

 ある部下に対しては「銀行がお金を回す必要があってこのような取引があり、悪いことをやっているわけではない」と説明。実際に「ビジネス」があるかのように思わせていた。別の部下には「おまえ疑っているのか」と叱責し、それ以上の質問を受け付けないという対応を取っていた。

 ネットワン社内だけでなく、取引先もX氏の要請を受け、事実と異なる書類を作成していた。東芝は決算説明会でこの点を問われ、「(ネットワンは)一定量の取引がある重要なお客さま。頼まれてついやってしまった」(東芝デジタルソリューションズの湯沢正志取締役)と話している。