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 IT業界の人々は何度も懲りずに架空取引や循環取引に手を染めてきた。企業は「巻き込まれた」と被害者の立場を装うが、それは言い逃れにすぎない。

 IT企業が当事者意識を持ち、不正根絶に臨むべきだ。問題点と具体策を専門家に聞いた。

ネットワンには厳正な対処を
弁護士 遠藤 元一 氏

 ネットワンシステムズで会計上の不正が見つかったのは、2006年に発覚したアイ・エックス・アイ(IXI)らの循環取引、2013年に分かった元社員による十六銀行を巻き込んだ架空取引に続いて、3度目になる。頻度が高い。仮に今後、取引所や監視委員会による改善報告・報告徴求などで「組織ぐるみ」が判明した場合は、上場廃止といった厳正な対処が必要だろう。

 今回「巻き込まれた」とする他社はどうか。過去の多くの循環取引の実例や裁判例から見ると、首謀者1人だけではなし得ず、積極的な協力者がいるパターンがほとんどだ。

 今回の循環取引はネットワン社員が首謀者で間違いない。一方、同社以外の企業は全て、組織としてはもちろん、社員個人としても架空取引や循環取引の認識はなかったと表明している。ただし調査結果だけでは、本当に協力者がいなかったかは分からない。

 各社の報告書や会見発言には興味深い点が2つある。1つは各社が「商流など、どこに何を納めるのかは話せない」という首謀者の説明を信じていた点。もう1つは富士電機ITソリューションのケースだと、富士電機の担当者が「今思えば、結果的においしすぎる取引が幾つかはあったと思う」という認識を示している点だ。

 「納める先を明かさない」「取引参加者が『おいしい取引』と感じる」「書面のみで物流に関与しない」などは、いずれも循環取引の典型的な特徴である。これでも組織や担当者が「気付けなかった」という説明は腑(ふ)に落ちない。誘われた側も最初は認識がなく取引を始めたのかもしれないが、数年にわたって取引を繰り返すうちに、うすうすおかしい取引だと気付いていた可能性もある。

 架空取引は社内のチェックの目が届きにくいようにするため、商品の名目を「請負代金一式」「IT機器一式」など曖昧にするケースが多い。さらに代金の数字が「ラウンドナンバー」と呼ぶ切りのよい数字になっている場合もよくある。複数の架空案件を回すのに手間がかかるため、代金の端数まで調整できなくなってくるためだ。

 取引が多重構造かつ目に見えない商品を取り扱うIT企業は架空取引に巻き込まれやすい。こうした架空取引の兆候を踏まえてチェックがなされているか、全企業が再確認すべきだろう。

遠藤 元一(えんどう・もとかず)
弁護士
遠藤 元一(えんどう・もとかず) 東京霞ヶ関法律事務所パートナー。循環取引や架空取引関連の訴訟・紛争解決を多く手掛ける。
IT業界の「生活習慣病」だ
会計評論家 細野 祐二 氏

 循環取引はIT業界、特にシステムインテグレーターに深く入り込んでいる生活習慣病のようなものだ。発覚自体は驚かないが、危ない取引に手を出しそうにない堅い会社の名前が出ていたことに、事の深刻さを感じた。

 多重下請け構造において2次請けや3次請けなど階層が下の企業ほど、開発完了から代金回収までの期間が長く、恒常的に資金繰りが厳しくなる。「お互いさま」の精神で、資金繰りが厳しい企業が余裕のある企業に架空取引を持ちかける不正は昔からある。

 上場しているシステムインテグレーターでも資産価値の高い自社製品や土地といった「資産」を必ずしも持っているわけではない。企業の価値は株価がほとんどであり、その株価は売り上げや利益によって上下する。

 四半期決算ごとに予想の進捗を厳しく見られ、増収増益でも目標未達であれば容赦なく株価が下がる昨今、IT業界は他業界以上に売り上げや利益を増やしたい動機が潜在的にある。必然的に経営層から現場にかかるプレッシャーは強く、安易に目標を達成する方法として社員が架空取引や循環取引に手を染めるケースもある。

 架空取引や循環取引は財務諸表の数字にゆがみをもたらす。ネットワンシステムズの決算を分析すると、2017年3月期に「会計利益先行率(純利益を営業キャッシュフローで割った割合)」が前年度の25%から1475%に跳ね上がっていた。IT業界平均の60%より高く、危険水準である100%もはるかに超えていた。

 運転資金も精査したところ、売上高が上がっているのに、通常上がるはずの営業債務の回転月数が逆に下がっていた。これは明らかな異常だ。売り上げは増えたが、売上原価を付けていないという循環取引の発生初期に見られる典型的な指標の動きでもある。

 様々な手法によって架空取引や循環取引は気付ける。各社は報告書で循環取引に主体的に関わっていないとする。だが不正を未然に防げず早期に発見できなかった結果だけを見れば、やはり企業やその経営者に責任はある。

細野 祐二(ほその・ゆうじ)
会計評論家
細野 祐二(ほその・ゆうじ) 細野祐二会計調査事務所を主宰。独自の指標で上場企業の財務諸表危険度分析を手掛ける。

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