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 2019年度に必須科目Iは択一式から記述式論文に代わった。第3回では実際の出題を基に、論文の構成や作成手順について伝える。日本技術士会が事前に公開している概念・出題内容・評価項目を網羅した問題となっており、この傾向は20年度も続くとみてよい。今から時事性が高いテーマを準備しておこう。19年度は台風15号や東日本台風(台風19号)が襲来。「防災意識社会」への転換というテーマが2年連続で出題されてもおかしくはない。(日経コンストラクション)

1.必須科目Iの論文内容

 2019年度の改正で新設された必須科目Iの論文内容を図1に示す。問題の種類は、「技術部門」全般にわたる専門知識、応用能力、問題解決能力および課題遂行能力である。

図1■ 2020年度の筆記試験の内容
問題の種類 配点 解答時間
I 必須科目に対応 40点 2時間
「技術部門」全般にわたる専門知識、応用能力、問題解決能力および課題遂行能力に関するもの
II 選択科目 30点 3時間30分
「選択科目」についての専門知識および応用能力に関するもの
III 選択科目 30点
「選択科目」についての問題解決能力および課題遂行能力に関するもの
選択科目の試験中に休憩時間はなし(資料:日本技術士会)

 記述式で2問の出題のうち1問を選択して、600字詰めの答案用紙3枚に記述する。試験時間は2時間なので、選択科目IIやIIIと比較すれば、記述する時間には割と余裕がある。

 必須科目の配点は40点だ。20年1月の発表では、合否基準は必須科目と選択科目それぞれで60%だった。

 図2に、2019年度の必須科目I−1、I−2の試験問題を示す。小問(1)~(4)の傾向は2問とも同様だった。

図2■ 2019年度の必須科目で出た問題

I-1

 我が国の人口は2010年頃をピークに減少に転じており、今後もその傾向の継続により働き手の減少が続くことが予想される中で、その減少を上回る生産性の向上などにより、我が国の成長力を高めるとともに、新たな需要を掘り起こし、経済成長を続けていくことが求められている。

 こうした状況下で、社会資本整備における一連のプロセスを担う建設分野においても生産性の向上が必要不可欠となっていることを踏まえて、以下の問いに答えよ。

  • (1)建設分野における生産性の向上に関して、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。
  • (2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
  • (3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
  • (4)(1)~(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

I-2

 我が国は、暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火その他の異常な自然現象に起因する自然災害に繰り返しさいなまれてきた。自然災害への対策については、南海トラフ地震、首都直下地震などが遠くない将来に発生する可能性が高まっていることや、気候変動の影響などにより水災害、土砂災害が多発していることから、その重要性がますます高まっている。

 こうした状況下で、「強さ」と「しなやかさ」を持った安全・安心な国土・地域・経済社会の構築に向けた「国土強靱化」(ナショナル・レジリエンス)を推進していく必要があることを踏まえて、以下の問いに答えよ。

  • (1)ハード整備の想定を超える大規模な自然災害に対して安全・安心な国土・地域・経済社会を構築するために、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。
  • (2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
  • (3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
  • (4)(1)~(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

 前段の問題文こそ長文であるが、設問の骨子は出題内容欄に要約できる(図3)。また、各小問で求められる概念についても詳しい内容を明示しているので確認しておきたい。これらに相当する内容は、論文作成時のチェックポイントとして留意しておく必要がある。

図3■ 必須科目の出題内容と試験の概念、評価項目

[出題内容と概念]
出題内容 概念に対応する番号
問題(前文でテーマの背景などを示し)、こうした状況下で、〇〇を踏まえて、以下の問いに答えよ。 A
(1)〇〇に関して、技術者の立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。 B
(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、
その課題に対する複数の解決策を示せ。
C
(3)(2)で提示した解決策に共通した新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。 D
(4)(1)~(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。 E
[必須科目の試験の概念や出題内容、評価項目]
概念 専門知識
  • 専門の技術分野の業務に必要で幅広く適用される原理などに関わる汎用的な知識
応用能力
  • これまでに習得した知識や経験に基づき、与えられた条件に合わせて(A)問題や課題を正しく認識し(B)必要な分析を行い(B)、業務遂行手順や業務上留意すべき点、工夫を要する点などについて説明できる能力
問題解決能力および課題遂行能力
  • 社会のニーズや技術の進歩に伴い、社会や技術における様々な状況から複合的な問題や課題を把握し(B)、社会的利益や技術的優位性などの多様な観点からの調査・分析を経て(B)問題解決のための課題(C)その遂行(C)について論理的かつ合理的に説明できる能力
出題内容 現代社会が抱えている様々な問題について、「技術部門」全般に関わる基礎的なエンジニアリング問題としての観点から、多面的に課題を抽出(B)して、その解決方法を提示し、遂行していく(C)ための提案を問う
評価項目 技術士に求められる資質や能力(コンピテンシー)のうち、専門的学識、問題解決(C)評価(D)技術者倫理(E)、コミュニケーションの各項目
専門知識や問題解決能力、課題遂行能力は設問全体を通して問われている。日本技術士会の資料を基に作成

 日本技術士会が事前に公開している概念・出題内容・評価項目を網羅させた出題となっており、この傾向は20年度も続くとみてよい。

 次に、小問(1)~(4)の題意を見てみよう。まず、(1)でテーマに関する課題を多面的に抽出して分析する。分析とは、抽出した課題の背景や現状を明らかにした上で、問題点を示すことである。続いて(2)では抽出した課題の中から最も重要な1つを挙げて、その解決策を複数記述する。

 そして(3)で、その解決策に共通するリスクと対策を記す。最後に(4)で、技術者としての倫理と社会の持続可能性の観点から、業務遂行の要件を答える。