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 指定確認検査機関の信頼が揺らいでいる。建築確認制度を改めて考える材料として、日経アーキテクチュアが2011年に掲載した記事を振り返る。

 建築確認は、危険な建築物を出現させない最後のとりでだ。しかし、その“番人”の責任がうやむやになっている。指定確認検査機関(以下、検査機関)を品質で評価して、利用者もそれに見合ったコストを負担すべきだ。

 震災後に株価が急上昇した企業がある。検査機関の日本ERIだ。

 地震が起こった3月11日の終値は25万4000円。わずか1カ月後の4月11日には39万円を付けた。上昇率は50%超。復興需要を当て込んだ結果とみられる。

 検査機関の注目度が高まる一方で、その責任は宙ぶらりんだ。

 近年、建築確認の審査ミスの責任を問ういくつかの裁判の判決が下った。例えば、2011年1月に東京地裁が出した判決。「構造計算書に偽造を疑わせる記載はなく、検査機関が偽造を看過した責任はない」として、姉歯事件でマンションの解体を余儀なくされた原告住民の訴えを退けた。

判断揺れる「審査ミス」の責任
判決年月 原告 被告 判決内容
2011年1月
(東京地裁)
グランドステージ住吉の元住民 イーホームズ(06年5月に指定取り消し)、東京都江東区 上層階と下層階で柱の断面が同じであり、通常の建物と異なっていたものの、それ自体が建築基準法に違反しているわけではない。同法施行令に構造計算の過程を確認する方法の具体的な規定はなく、検査員が数値を確かめる義務はない。構造計算書に偽造を疑わせる記載はなく、検査機関のイーホームズが偽造を看過した過失はない。検査機関に過失がない以上、区にも責任はない
10年10月
(名古屋高裁:09年2月の名古屋地裁の判決を不服として、1審の被告が控訴)
愛知県、総合経営研究所(東京都千代田区) センターワンホテル半田の経営者 建築主事は当時、21日間で審査するよう定められていた。審査の程度に限界があることを前提としており、建築確認を下ろした県に注意義務違反はない。誤った建築確認に対して、行政への責任追及は可能。しかし、責任が認められるのは、建築主事の注意義務違反が故意・重過失に当たる場合に限られる。1審が認めた注意義務違反はそれに当たらない。総合経営研究所だけに1億6000万円の賠償を命じる
09年7月
(東京地裁)
ヒューザー(11年1月に破産手続き終結) 東京都、横浜市、イーホームズなど 建築確認は建築士に対する信頼を前提に、設計内容が規定に適合しているかどうかを確認する制度。建築物の適法性を保証するものでなく、審査に限界があった。国指定の構造計算プログラムを使った場合は添付書類の省略が認められており、再計算する義務はない。自治体や検査機関に注意義務違反はない
09年2月
(名古屋地裁)
センターワンホテル半田の経営者 愛知県、総合経営研究所 中廊下を介する2枚の耐力壁を、1枚の耐力壁にモデル化するなどして構造計算していた。明らかに不適切で、容易に発見できたにもかかわらず、県は注意義務を怠って見逃した。建設省(当時)が監修した「建築構造審査要領」などに基づき審査する義務があった。ホテルの開業を指導した総合経営研究所は、設計者を適切に選定する注意義務を怠った。両者が連帯して5700万円を支払うよう命じる

 10年10月の名古屋高裁の判決では、「審査には限界があり、特定行政庁である愛知県に故意や重過失による注意義務違反はない」と判断。構造計算書の偽造を見抜けずに建築確認を下ろした県の責任を認めた09年2月の名古屋地裁の判決を覆した。

 国土交通省は07年6月に施行した改正建築基準法で、構造計算をピアチェックする構造計算適合性判定制度を導入した。審査の責任は姉歯事件当時よりも増している。