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量を求めると、もうからなくなる

田子 やっぱり欧州は農作物や加工品に関する地域還元性が非常に高いんですよね。

 それは、地域に落ちるお金もそうだし、地域を守っていこう、代々つなげていこうという意識が非常に高いと思います。日本がうまくいっていないと思うのは、どうしても量を求めてしまって、均質化してしまうがために利益が上がらないという悪循環に陥ってしまっていることです。均質化すると地域性は薄れてしまうから、特定の大企業しかもうからない仕組みになる。それはやっぱり地域のためにならないと思うんです。

 地域を盛り上げるということは、持続可能なやり方で豊かにしていくということですが、そこにまだまだ大きなハードルがあります。例えば、日本の農地はどうしても市町村単位で区切られてしまっていて、そこで考え方も分断されてしまっている。そこをクリアできると、日本もまだまだ変わっていくポテンシャルが絶対にあります。実は昔の方がすごく効率的な良いやり方をしていたということは、いっぱいあるなと感じます。

松坂 今、フランスでは、例えばブルゴーニュにしても、ここの畑は良いぶどうが採れるからグラン・クリュ(一級畑)という具合に、畑にも等級が付いています。それを日本は全部平等ということで、見えなくしてしまったというのはあると思います。だけど、今後ブランド化していくためには、それも個性として認めていく必要がある。この畑は大量に同じ物を作ったほうがいいのか、それとも個性がすごく大事な畑だから未来永劫そこには農薬を持ち込まないで守り続けるとか、そういう評価が大事です。生産者ばかりじゃなく、消費者も維持のために費用を出すというような考え方も求められます。そうすることで持続可能になる。

 地域ぐるみのブランド化という意味では、MGVsのスパークリングに「ポッシュ(POSH)」と田子さんに名付けてもらったんですが、これを地域ブランドにしていきたいです。フランスにはシャンパーニュがあるし、イタリアにもフランチャコルタ、スペインはカヴァ、ドイツはゼクトと、どこにも固有の名前があるんです。日本では、スパークリングワインとしか呼ばないですよね。固有の名前があるということは、「他とは違うんです」という個性があるということです。今後は地域ブランドとしてポッシュを使ってほしいなという思いでやりました。

スパークリングワイン「ポッシュ(POSH)」(出所:エムテド、MGVsワイナリー)
スパークリングワイン「ポッシュ(POSH)」(出所:エムテド、MGVsワイナリー)
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 取りあえず商標は押さえたんですが、商標だけで地域ブランドになるわけではないので、きちんと製法を決めて、それを世界的ブランドに育てていきたいですね。やっぱりMGVsというブランドを育てるためにも、自分たちだけじゃなく地域全体のブランドが育たないと、世界には認知されないと思いますから。

松坂浩志(まつざか・ひろし)
塩山製作所 代表取締役、MGVsワイナリー オーナー
松坂浩志(まつざか・ひろし) 大学卒業後、大手物流企業の情報部門・企画開発から、塩山製作所に入社。1998年、40歳で社長就任、半導体の後工程の加工からウエーハ加工の事業を立ち上げ、現在は、半導体の加工を日本とベトナムに展開、勝沼の工場をワイナリーとして2017年4月23日オープン。(写真:加藤 康)
田子學(たご・まなぶ)
エムテド代表取締役 アートディレクター/デザイナー、慶応義塾大学大学院 特別招聘教授。
田子學(たご・まなぶ) 東芝デザインセンター、リアル・フリートを経て、エムテドを起業。GOOD DESIGN AWARD、Red Dot Design Award、iF Design Award、International Design Excellence Awardsなど世界のデザイン賞受賞作品多数。著書に『デザインマネジメント』『突き抜けるデザインマネジメント』(いずれも日経BP)など。(写真:加藤 康)