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電気は熱に変換できる

田子 だけど、電気は熱に変換できるわけです。それで50ワットもあると、水を沸騰させられることも分かりました。だったら、テーブルの上にコーヒーを置いておくと、ずっと保温するというようなこともできる。電源の新しい使い方として提案できるという話をしていました。

 もしレストランやカフェでこんな電源がインフラとして普及すれば、サービスそのもの、例えばサーブの仕方なんかが変わっていくのではないかという発想に至ったんです。単に電気を供給するというのではない。それは、既存のメーカーにはなかなかない発想なんじゃないかなと。

 最近はカフェブームで、お店のWi-Fiやコンセントが自由に使えるところも多いです。みんなそこでパソコンを広げてコーヒーやお茶を飲んでいるけど、その人がどういう時間を過ごしているかというのはお店も見えていません。当然、電源メーカーはもっと分かっていない。だけど、それが見えてくると新しいサービスを開発できるようになる。それこそが電源の新しい可能性ではないかという話です。

(写真:加藤 康)
(写真:加藤 康)

鈴木 そこで、我々は単にワイヤレス給電のユニットだけではなく、インターネットに接続するアプリも併せて、「POWER SPOT(パワースポット)」というワイヤレス給電システムとしてハードウエアとソフトウエアを提供していきます。我々のシステムを家電や家具に組み込んでもらえば、ワイヤレス給電できるようになるだけではなく、インターネットのアプリと連携するとか、別のIoTデバイスとインターネット経由でつながるとか、全く新しい世界も実現できます。

 直観的なインターフェースを搭載したのも、ワイヤレスならではの特徴だと考えています。例えば、給電ユニットの上で製品を回すと、出力を増減できます。そうすると、照明の明るさとか、温めるときの温度とか、音のボリュームとか、いろいろな調整を右へ回す、左へ回すという動作だけで可能にします。それによって、新しい食生活なども提案していきたいと思っています。

田子 インターフェースというのは、最終製品のメーカーが考えることが多いですが、これを電源メーカーがあらかじめ定義しておくというのが重要だと思っています。これまでの電源は、極端にいえばスイッチのオン・オフぐらいしかありませんでした。そこにインターフェースを入れ込めれば、様々なカスタマイズが可能になる。そうすると、最終製品のメーカーやそのサプライヤーがいちいち作り込まなくても、そのインターフェースが様々なことに流用できるアセットになります。

鈴木 そうなると、単にプロダクトを作るだけではなく、サービスやインフラとして普及を図る必要があります。提案する相手も、既存のお客さんとは違うところが増えてくる。そこで、ベルデザインという会社を新たに興しました。そこでは、インフラを提供する会社や、ものづくりのメーカー、あるいはVC(ベンチャーキャピタル)などと一緒に、時代を変えていくような仕組みを作っていきます。また、提案先も、机など家具メーカー、レストラン、カフェ、自動車メーカー、航空会社、ホテルなど多岐にわたります。

 今、インターネットにつながるには、パソコンやスマホで文字を入力したり、いろいろと操作したりする必要があります。これを、物を置くとか回すとか単純な動作だけでインターネットに接続できるようになる。これはやっぱり画期的だと思うんです。電源というのは、単にAC(交流)をDC(直流)に変換するものだったのが、インターネットにつながる窓口にもなる。逆にいえば、パートナーはこの技術を組み込むだけで、世の中になかったものを生み出していくことができるわけです。ぜひ日本のメーカーにこの技術を使ってもらって、価格競争ではない勝負に出てほしいです。日本のものづくりは一流ですから、製品とインターネットの世界との境界線をどうつなげていくかで製品の価値が変わります。