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 「クッキー(cookie)は悪いものだから日本も規制をするのか」「いつからクッキーが使えなくなるのか」――。Webブラウザーに記録する「クッキー」へのこんな誤解が広がっている。日本でクッキーそのものを取り締まる規制は検討されていないし使えなくなるわけでもない。

 クッキーに対する正しい理解をせずにデータを活用した企業収益の向上は望めない。例えば企業が広告主としてWebサイトの閲覧者に広告を表示する場合、広告表示のために各種クッキーを利用することに対して閲覧者から何らかの同意を得ることは、広告効果を高めるだけでなく企業の信頼を高めることにつながる。企業はクッキー利用の何が問題なのかを理解する必要がある。

 クッキーとはWebサイトを閲覧したWebブラウザーなどに保存される「番号札」のようなものだ。インターネットの標準技術として定められ、閲覧者が同じブラウザーを使ってサイトを再び訪れた際に改めてログインしなくても同じ閲覧者であると認証するといった、ユーザーの利便性を高める仕組みなどに使われている。

 クッキーは閲覧者が訪れたWebサイト(ファーストパーティー)以外の第三者のサイトが発行し、ブラウザーに記録している場合もある。これは「サードパーティークッキー」と呼ばれる。例えば閲覧者が訪れたWebサイトの管理者が広告表示のタグを設置して、閲覧者ごとにクッキーを発行する。するとネット広告会社と閲覧者との間に番号札の関係ができる。

閲覧者がアクセスしていないサイトからもクッキー
閲覧者がアクセスしていないサイトからもクッキー
出所:寺田真治日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)主席研究員の資料を基に日経クロステック作成
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 さらにネット広告会社が「クッキーシンク(Cookie Sync)」と呼ばれる手法を使えば、広範なWebサイトにまたがって閲覧者のブラウザーがどんなサイトを訪れたかなどを追跡できる。

 企業がこうした行動履歴を追跡すれば同じブラウザーを使った閲覧者がどんな関心を持っているか、どんな商品を購入したかなどを把握できる。Webサイトにタグを埋め込んでブラウザーを介してクッキーを連携する手法は「ピギーバック(piggy back)」と呼ばれるが、一般に広くクッキーシンクと呼ばれている。

 例えば、閲覧者が訪れたWebサイトが広告主の企業である場合、閲覧者がどのような興味や関心を持っているか、広告主が持つ顧客データだけでは分からない。そこでサードパーティークッキーやクッキーシンクなどを利用して、Web閲覧者の番号札を幅広く名寄せできれば、閲覧者の属性や興味・関心、嗜好に合致しそうな広告を狙い撃ちする形で配信できる。行動ターゲティング広告などと呼ばれる。

 こうした閲覧者のデータの収集や蓄積、統合・分析する「データ・マネジメント・プラットフォーム(DMP)」と呼ばれる機能を提供するサービスがある。様々なWebサイトなどから閲覧者のデータを収集し、IDを付けて統合・分析、外部に提供するサービスは「パブリックDMP」と呼ばれる。

クッキーによる行動履歴の収集の例
クッキーによる行動履歴の収集の例
出所:寺田真治日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)主席研究員の資料を基に日経クロステック作成
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 閲覧者はブラウザーに記録されたクッキーをいつでも削除できる。しかしこうしたクッキーの利用で問題になっているのは主にサードパーティークッキーの扱い方だ。

 広告を表示する目的などでサードパーティークッキーを利用する場合、閲覧者が自らの意思でアクセスしたWebサイトとは別に意図せず第三者であるネット広告のサーバーにもアクセスしている。そのため閲覧者が気づかないうちにネットの閲覧状況や購買履歴などが、ネット広告会社などに取得されている場合があるからだ。

焦点は海外のクッキー規制

 最近になってクッキーの利用を巡って新たな動きが相次いで伝えられた。それぞれ別の動きではあるものの、いずれも主にサードパーティークッキーの扱い方が問題になっているのは同じだ。

 このうちもっとも注目を浴びたのは米グーグル(Google)の動向だろう。同社は2020年1月、世界で最もシェアの高いWebブラウザー「Chrome」が今後2年以内にサードパーティークッキーの利用を段階的に停止するとブログで公表した。Web閲覧者のプライバシー保護を求める要望に対応するためだ。

 サードパーティークッキーについては既に米アップル(Apple)のWebブラウザー「Safari」や米モジラ財団(Mozilla Foundation)の「Firefox」は初期設定でブロックする仕様に変更している。グーグルの公表した内容はこれらに追随する動きだ。