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 米人工知能学会が2020年2月7~12日に米ニューヨークで開催した年次国際会議「AAAI-20」で発表した研究者の大半は、米国または中国からの参加者だった。折からの新型コロナウイルスの影響で、音声やビデオを通じたリモートの口頭発表も目立った。

 その中で、少数ながら日本の企業や研究機関からの発表も見られた。いくつかを抜粋して紹介しよう。

CiNetとNTTデータ、脳と深層学習を組み合わせた研究成果を披露

 脳情報通信融合研究センター(CiNet)とNTTデータのチームは、脳のfMRI(磁気共鳴機能画像法)データと深層学習を組み合わせて画像分析などの精度を高める「脳を介した転移学習(BTL:Brain-mediated Transfer Learning)」について発表した。脳の反応を再現するAIモデルをニューラルネットワークの前後に組み込むことで、ニューラルネットワークの予測精度を高めることを目指す。CiNetは情報通信研究機構(NICT)と大阪大学に所属する研究センターである。

 研究チームはBTLの有効性を検証するため、BTLに加え、事前学習済みCNNと回帰モデルを組み合わせた通常の転移学習(TL:Transfer Learing)、fMRIの実測データと回帰モデルを組み合わせた脳デコーディング(BD:Brain Decoding)での予測精度を比較した。

3つのモデル(上からBTL、Standard TL、Brain Decoding)を使い、予測精度を検証した
3つのモデル(上からBTL、Standard TL、Brain Decoding)を使い、予測精度を検証した
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 動画に関するいくつかのタスクを試したところ、「シーン記述」や「印象評価」など脳デコーディングによる予測精度が低かったタスクについては、BTLは通常の転移学習と比較して精度の改善は見られなかった。

 一方、脳デコーディングの精度が比較的高かった「広告動画の視聴完了率推定」のタスクで、BTLの予測精度が通常の転移学習より大幅に改善した。この成果から研究チームは「BTLは人間の認知や行動を推定するのに有効なフレームワークだ」との結論を示した。

動画視聴完了率推定のタスクで、BTLが高い予測精度を実現
動画視聴完了率推定のタスクで、BTLが高い予測精度を実現
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富士通は多目的最適化の新手法を提案

 富士通は理化学研究所革新知能統合研究センター(理研AIP)と共同で提唱している新たな機械学習技術「Stratification Learning」について、高い精度を得るのに必要な学習データ数を既存の手法より半減できることを示し、同学会で発表した。

富士通と理研AIPが提唱する「Stratification Learning」の概要
富士通と理研AIPが提唱する「Stratification Learning」の概要
(出所:富士通)
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 「安価で軽量、かつ高強度の車体の設計」など複数の変数が絡む多目的最適化問題について、機械学習を応用して近似解を得るには、実験やシミュレーションを通じて大量の学習データを集める必要がある。新手法を使えば、こうした学習データ取得に必要な手間やコストを削減でき、より多様な設計を実現できるという。

クックパッドはレシピからカロリー総量を予測

 クックパッドは併催のAI産業利用セッションで、機械学習ベースのカロリー推定技術を披露した。レシピに示した食材名と分量などから料理1人分のカロリー量を算出する。

レシピのテキストデータからカロリー総量を推定
レシピのテキストデータからカロリー総量を推定
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 食材の表記揺らぎに対応するため、深層学習におけるエンコーダー・デコーダー・モデルを適用した。例えばしょうゆ1つとっても「しょうゆ」「ショウユ」「お醤油」「(ハート文字)しょう油」など100種類以上の表記がある。

レシピに記載された食材の名称はゆらぎが大きい
レシピに記載された食材の名称はゆらぎが大きい
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 これらの表記を入力すると「醤油」という正規の表現を出力するようニューラルネットワークを訓練した結果、7割以上の精度で正規の表現を出力できたという。

ソニーはAI人材の獲得へブース出展

 ソニーはAAAI-20に、米IBMと並ぶ最上位のスポンサーとして参加した。AAAI-20で企業ブースを設け、高精細画像の分析や音声解析などの技術を参加者に披露するとともに、機械学習エンジニアやコンピュータービジョンエンジニアにソニーへの入社を呼び掛けていた。

ソニーはAAAI-20に企業ブースを出展し、参加者にAI関連の研究テーマを解説していた
ソニーはAAAI-20に企業ブースを出展し、参加者にAI関連の研究テーマを解説していた
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 同社は2019年11月に、AIの基礎的な研究開発を推進する新組織「Sony AI」の設立を発表。ゲームやイメージセンサーにAI技術を応用する研究などを中心に研究開発に取り組み、「今後世界中から優秀なAIリサーチャー、AIエンジニアを招聘、採用」(同社リリース)するとしていた。