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 近年はスマホやタブレットが防災対策の手段として脚光を浴びている。SNSやメールを使って防災に関する情報をいち早く住民にアナウンスする仕組みを設ける自治体も少なくない。

 今回筆者は、米アップル(Apple)のiPhoneやiPadを用いた独自の取り組みを行う青森県を取材する機会を得た。これらのデバイスを活用し、障害者や高齢者などに災害情報を迅速に提供する取り組みである。その内容を2回に渡って紹介しよう。

 1回目は、2011年3月11日に発生した東日本大震災で住民情報弱者に向けたICT利用を推進することになったきっかけを取り上げる。

(写真:伊藤朝輝、以下同じ)
(写真:伊藤朝輝、以下同じ)
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東日本大震災後のアンケートがICT活用の指針に

 2011年3月11日の東日本大震災発生後の通信インフラの状況について、青森県は翌2012年9月に「災害時等におけるICT利活用に関する県の取組」というレポートで次のように報告した。

「青森県内では地震に伴う停電により通話や通信に大きな影響が発生。NTTドコモでは、監視対象の半数近くの基地局が一時停止したものとみられる。固定電話(NTT東日本)では通信規制は行われなかったが、携帯電話各社は数日間にわたり通信規制をかけた。一方、メール(パケット通信)は、短時間の規制にとどまり使える状況だった」。

 またレポートでは、ウェザーニューズが2011年4月に公表した「『東日本大震災』調査結果」を引用している。これは被災時に青森県で家族や友人と連絡が取れるまでにかかった連絡手段ごとの時間をまとめたものだ。

東日本大震災発生直後の被災地では、電話などの「音声サービス」よりも、SNSやメールなどの「通信サービス」のほうが、比較的早く家族や友人と連絡を取れた
東日本大震災発生直後の被災地では、電話などの「音声サービス」よりも、SNSやメールなどの「通信サービス」のほうが、比較的早く家族や友人と連絡を取れた
(出所:青森県「災害時等におけるICT利活用に関する県の取組」、元のデータはウェザーニューズ「『東日本大震災』調査結果」による)
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 停電中を除けばインターネット接続をはじめとする「通信サービス」は使える状態だが、携帯電話の「音声サービス」は比較的長い間つながりにくい状態だった。特性を理解して適材適所での使い分けが必要だと結論づけている。

 青森県は2012年に県内の視覚障害者554名、ならびに聴覚障害者320名を対象に「災害時における視覚・聴覚障害者のためのICT利用」というテーマでアンケートを実施。2013年1月にレポートとしてまとめている。東日本大震災発生後に、視覚・知覚障害者が情報を迅速に得られずに不安にさいなまれた状況が浮き彫りになった。

 アンケートの結果によると、震災後に困ったこととして、停電が72%、情報が得られないことが53.7%、食料不足が52.4%、メールがつながらないが48.4%と続いている。様々な困難があったが、その中でも情報が得られずに困ったいう回答が高い順位にある。

 テレビに表示される緊急速報の文字情報は視覚障害者には伝わりにくい、ワンセグで見ている場合には字幕や画面隅に映る手話通訳が小さく読み取りづらい、などの問題も指摘された。障害者に対する配慮があったとしても、まだまだ課題が残されていると分かる。

 その一方で、音声読み上げや画面表示の拡大機能など、障害者の使い勝手に配慮したユーザーインターフェースを持つスマホやタブレットが緊急時の情報収集に役に立っていたことも読み取れた。

災害時に利用される通信インフラなどのICTは、その時代によって変遷しており、東日本大震災ではSNSが活躍した
災害時に利用される通信インフラなどのICTは、その時代によって変遷しており、東日本大震災ではSNSが活躍した
(出所:青森県「災害時等におけるICT利活用に関する県の取組」)
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