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 東日本大震災発生時に起こった通信インフラの障害を契機に、県民のICT活用を一層推進している青森県。中でも障害者や高齢者をサポートするための「障害者・シニアの方にiPadを教える人財育成講座」という講座がユニークだ。第2回の今回は、その講座の内容を紹介しよう。

(写真:伊藤朝輝、以下同じ)
(写真:伊藤朝輝、以下同じ)
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聴覚障害者の情報取得にはiPadが便利

 今回の講座ではまず、聴覚に障害を持つ浅利義弘氏が特別講師として登壇。同氏は青森県ろうあ協会の事務局長を務めており、iPhoneとiPadを使い始めて6年になる。東日本大震災の際にはまだ使っていなかった。

東日本大震災で情報を得にくく不安を感じたことをきっかけにiPadを使い始めた浅利義弘氏。特別講師として聴覚障害者の特性や自身のiPad活用方法を語った
東日本大震災で情報を得にくく不安を感じたことをきっかけにiPadを使い始めた浅利義弘氏。特別講師として聴覚障害者の特性や自身のiPad活用方法を語った
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 地震が発生した2011年3月11日、浅利氏は東京での会議のため自宅を出て新青森駅から新幹線に乗るところで被災したそうである。何が起こったかしばらくは分からず、車に付いていたカーナビのテレビを見てようやく理解できたとのことだ。その後、十分な情報が得られない不便さを感じたことが、iPadを手に入れる動機となった。

 iPadを1台持つだけで多くの情報が得られるため、安心して移動できるようになったそうだ。大きな画面から視覚で情報が入ってくるiPadは聴覚障害者の助けになるとのこと。

 浅利氏は「青森県内にいる聴覚障害者の多くはiPhoneやiPadを持っており、日常的にビデオ通話を利用している」と話す。手話での会話に大きな画面を使える点が適しており、加えて、別途アプリをインストールすることなく、標準で「FaceTime」というビデオ通話アプリを搭載しているため人気があるという。

 浅利氏はiPhoneとiPadの両方を持ち歩いているが、iPadを見ることのほうが多いそうだ。中でも特に役に立っているものとして、NHKのニュースを挙げた。NHKのニュースは字幕が付いており、他のテレビ局のニュースよりも視覚情報が多いからだ。災害情報の提供も早いように感じるとのこと。

 次に災害や緊急時に使える仕組みとして、音声による通報が困難な場合でも円滑に消防に通報できる「Net119緊急通報システム」、および警察に通報できる「警視庁110番サイト」を紹介した(本記事執筆時点では警視庁110番サイトは終了し「110番アプリシステム」に移行している)。いずれもスマートフォンやタブレットなどの画面から通報し、現在地なども伝えられる。日本語が話せない外国人も使っているそうだ。

 障害者の立場に立たないとあまり接することのない情報だけに、多くの受講者が関心を持つ様子がうかがえた。

音声による通報が困難な場合でもスマートフォンなどの画面から警察に通報できる「110番アプリ」。このアプリをスマートフォンやタブレットにインストールし、110番アプリシステムを利用する
音声による通報が困難な場合でもスマートフォンなどの画面から警察に通報できる「110番アプリ」。このアプリをスマートフォンやタブレットにインストールし、110番アプリシステムを利用する
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音声を文字に変換する「UDトーク」というアプリ。講師の声はプロジェクターに接続されたiPhoneで文字に変換され、講師の横にあるスクリーンに表示される
音声を文字に変換する「UDトーク」というアプリ。講師の声はプロジェクターに接続されたiPhoneで文字に変換され、講師の横にあるスクリーンに表示される
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