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人事業務のクラウドサービスがタクシーの車内サイネージやテレビCMなどをにぎわしている。HRテックは今まさに戦国時代を迎え、ベンダー各社がAI(人工知能)やデジタル技術を活用した機能強化に工夫を凝らす。主な動向を紹介する。

 HRテックの波は勤怠管理や給与計算といった領域にも押し寄せる。いずれも旧来の人事システムに備わる機能だが、進化の余地はまだまだあった。

 機能拡充が進む背景には各種の法改正がある。例えば働き方改革関連法の施行により、2020年4月から中小企業にも残業の上限規制が適用される(大企業に対しては適用済み)。原則として年間で720時間を超える残業が禁止となる。違反すれば罰則(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科される恐れがある。

 この他、労働基準法の改正により、2019年4月以降、10日以上の有給休暇が付与される従業員は年間で5日以上の有給休暇を取得することが義務付けられた。以前に増して従業員の労働時間を厳格に管理しなければならない。

法令違反となる前に警告

 もっとも、従業員1人ひとりの残業時間や有給取得日数が適切かどうかを確認するのは手間がかかる。現状では、人事部門や現場の上長が個別にチェックしている企業が多い。

 こうした状況を受け、クラウド会計サービスなどを手掛けるfreeeは人事サービス「人事労務freee」に残業や有休消化の実態を自動でチェックする機能を加えた。従業員が残業などをシステム上で申請しようとすると、システムが自動でそれまでの勤怠データ、労働基準法や社内ルールに基づいて「今月の残業時間が(原則の上限である)45時間を超える見込みです」などとアラートを表示する。

 アラートは人事労務freeeの「チャット機能」を通じて受け取る仕組みだ。申請者と承認者の双方の画面内に「自動でチェックBOT」からのチャットコメントとしてアラートが出る。アラートを見た承認者が即座に「業務を翌日以降に回すことはできませんか」などと申請者にコメントしやすい。

「人事労務freee」が備える申請内容の自動チェック機能、画面右端にチャット形式でアラートを表示する
「人事労務freee」が備える申請内容の自動チェック機能、画面右端にチャット形式でアラートを表示する
(画像提供:freee)
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 同社は出退勤時刻を厳密に管理するための機能も用意した。人事労務freeeのスマホアプリを使えばタイムレコーダーのように出退勤時刻をシステムに記録できる。その際、位置情報もスマホから取得する。このため、「外勤の多い営業担当者などが、顧客訪問と偽って自宅で出勤時刻を打刻してもウソだと分かる」(尾籠威則プロダクト戦略本部プロダクトマーケティングマネージャー)。