デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させるのに役立つ3つのクラウド技術、「データレイク」「コンテナ」「マルチクラウド」の中から、今回はマルチクラウドを活用するZOZO、NTTドコモ、星野リゾート、マイナビの事例を紹介する。
マルチクラウド
先端サービスを活用
「新しい事業や商品・サービスを作る際、クラウドの先端サービスでなければニーズを満たせないことがある。そこで複数のクラウドのサービスを併用し、マルチクラウドの構成にしている」。ZOZOのIT子会社であるZOZOテクノロジーズの岡大勝開発部Chief ZOZOTOWN Architect(CZA)はクラウド利用の方針をこう説明する。
ZOZOが最も利用するクラウドは米アマゾン・ウェブ・サービスのAmazon Web Services(AWS)だ。「AWSは顧客の声に基づいてサービスを開発しており、全般に使い勝手が良い」と岡CZAは評価する。しかしAWSのサービスだけでは足りないという。
「分野によってはAWSより先進的なサービスを米グーグルのGoogle Cloud Platform(GCP)や米マイクロソフトのMicrosoft Azureが提供している。それらの先進的なサービスを選んで、AWSのサービスと組み合わせて使っている」(岡CZA)。
先進的なサービスの1つがGCPのデータウエアハウス(DWH)サービス「BigQuery」だ。拡張性を高める独自の仕組みを備えており、数千ノードによる大規模分散処理も可能だという。ZOZOはBigQueryをWebサイトのログデータの分析などに使っている。
マルチクラウドにすることで各クラウドの先進サービスを取り入れられる半面、新たに生じる問題もある。例えばネットワークの遅延だ。複数のクラウドをインターネットで結ぶと遅延がばらついて安定しない。そこでZOZOは1カ所のデータセンターからAWSとGCPそれぞれに対して毎秒10ギガビットの専用線を敷設した。これにより「通常のデータセンター間の遅延と同じレベルに抑えられている」(岡CZA)。
マルチクラウドにすることで運用監視の手間が増える問題もある。クラウドはそれぞれ個別に運用監視サービスを提供しており、クラウドごとに監視しなければならない。
ZOZOは複数クラウドの運用について一元的に監視できるツールを導入した。採用したのは米データドッグの「Datadog」だ。「Datadogにより運用監視の負担は増えていない」(岡CZA)という。