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 AI(人工知能)が日本語を聞いたり読んだり話したりする。そんな「日本語テック」を企業が続々とビジネスに取り入れ始めた。既に業務に欠かせないツールになっている現場もある。先進企業の「日本語テック」の活用を紹介する。

 AIを用いた自然言語処理でホットな分野の一つが翻訳だ。AI翻訳を業務に導入したり、訪日外国人への接客に活用したりする動きが始まっている。

社員2000人がAI翻訳を利用

 田辺三菱製薬は2019年3月から自社と一部のグループ会社の様々な業務でAI翻訳を活用している。日本語と英語、日本語と中国語の間での翻訳に使う。適用対象として代表的なのが、海外の規制当局とやり取りする薬事業務の文書翻訳である。このほか研究開発(R&D)や工場など多くの部署において翻訳が必要な業務があるという。

 田辺三菱製薬および対象としたグループ会社の社員は合計5000人ほどで、そのうち2000人程度が実際にAI翻訳を使っている(2020年2月時点)。AI翻訳の製品はNTTコミュニケーションズ(NTTコム)の「COTOHA Translator」を採用した。ディープラーニング(深層学習)の技術を使ったAI翻訳クラウドサービスである。

右から田辺三菱製薬 ICTマネジメント室の橋本寿美子氏、岩井克仁ICTマネジメント室長、高橋竜之ICTマネジメント室 ICTマネジメントグループ主査、ICTマネジメント室ICTマネジメントグループの金村清一氏
右から田辺三菱製薬 ICTマネジメント室の橋本寿美子氏、岩井克仁ICTマネジメント室長、高橋竜之ICTマネジメント室 ICTマネジメントグループ主査、ICTマネジメント室ICTマネジメントグループの金村清一氏
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同業13社が学習データを持ち寄り翻訳精度向上に使う

 田辺三菱製薬のAI翻訳システムで特徴的なのはCOTOHAの「製薬カスタムモデル」を利用していることだ。製薬カスタムモデルはNTTコム、翻訳業のみらい翻訳と翻訳センターの3社が中心となって2018年秋に立ち上げたコンソーシアム「製薬カスタムモデル共同開発」で開発している。製薬業向けAI翻訳の精度を向上させるのが目的だ。

 製薬会社の参加を募っており、2020年2月時点で田辺三菱製薬を含む13社の製薬会社が参加している。主催の3社を合わせると16社だ。製薬会社が学習データを提供し、主催の3社がそれを基に製薬カスタムモデルの翻訳精度を向上させる。

 製薬カスタムモデルの最初のバージョンは2019年10月に提供を開始した。田辺三菱製薬の高橋竜之ICTマネジメント室ICTマネジメントグループ主査は「製薬会社1社が持っている学習データでは翻訳精度を高めるのに十分ではない」と話す。多数の製薬会社が持ち寄ることで翻訳精度が上がると考えている。