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 AI(人工知能)が日本語を聞いたり読んだり話したりする。そんな「日本語テック」を企業が続々とビジネスに取り入れ始めた。既に業務に欠かせないツールになっている現場もある。先進企業の「日本語テック」の活用を紹介する。

 スカパーJSAT子会社のコールセンター事業者であるスカパー・カスタマーリレーションズ(SPCC)は「日本語テック」先進企業の1社だ。顧客がコールセンターにかけてくる電話の通話内容を、AIによってリアルタイムでテキスト変換し、顧客満足度と業務効率の向上につなげている。

問い合わせ理由を10項目に自動分類

 SPCCはスカパーJSATの有料放送サービス「スカパー!」を中心にコールセンターの運営を請け負う。約850人のオペレーターが年間400万件以上の問い合わせに対応している。

 同社が利用している日本語テックのシステムは2つある。(1)問い合わせを理由に基づいて自動分類する「コールリーズン分類システム」、(2)問い合わせ内容に関連した情報をオペレーターのパソコン画面にポップアップ表示する「オペレーター支援システム」だ。

 コールリーズン分類システムは2018年4月に運用を開始した。音声認識ソフトの開発会社であるアドバンスト・メディアのコンタクトセンター向けパッケージソフト「AmiVoice Communication Suite」を利用して、音声をテキスト変換する。さらにAIベンチャーであるレトリバの機械学習エンジン「Predictor」によって、テキストを似た特徴を持つグループに自動分類する。

コールリーズン分類システムの画面
コールリーズン分類システムの画面
(出所:スカパー・カスタマーリレーションズ)
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 SPCCの運用統括部に所属する大下泰明氏はコールリーズン分類システムの目的を「AIで分類した問い合わせ内容と件数を基に、翌月はどういうスキルを持つオペレーターが何人必要になるのか予測して人員配置に生かす」と説明する。人員の余剰を避けつつ顧客を長く待たせずに回答する体制を作る。

 同システムの導入前は人手で問い合わせ理由を入力していた。しかし有効ではなかったという。「顧客は解約方法の問い合わせで電話をかけてきたが、途中で未契約チャンネルの質問に変わり、最終的に契約チャンネルの変更依頼を受けるケースがある。この場合、問い合わせの理由は『解約』だが、人手に任せると『チャンネル変更』や『その他』に分類するケースが少なくなかった」(大下氏)。そこで、AIを使って機械的に分類することにした。

 上記の例で問い合わせ理由が「解約」となるのは、最初の問い合わせ内容に応じて適切なスキルを持つオペレーターに電話を振り分けるからだ。本システムの導入目的はオペレーターの必要人数の予測なので、電話を振り分けるきっかけとなった理由を把握する必要がある。

 具体的には、Predictorに過去の通話内容をテキスト変換したデータ10万サンプルを学習させて分類モデルを作成した。この分類モデルを使って日次で、通話内容ごとに「加入」「チャンネル変更」「機器問い合わせ」など10個の問い合わせ理由のどれに該当するかを判断し分類している。

 大下氏は「オペレーターの必要人数の予測精度が高まったうえ、問い合わせ理由の可視化が思った以上に大きい効果を上げている」と評価する。電話問い合わせの件数が予測を超えて顧客を長時間待たせたとき、分類ごとの件数の傾向から原因を分析しやすくなったという。

 分類モデルによって問い合わせ理由別の通話時間が分かる点も大きいという。想定以上に時間がかかっていれば、オペレーターが説明に手間取っている。「マニュアルや人員配置を見直すなど改善のきっかけになる」と大下氏は話す。