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 「ハイプ・サイクル」というのをご存じだろうか。ITに関する世界的なシンクタンクである米ガートナーが提唱している考え方で、大変示唆に富む。

ハイプ・サイクル
ハイプ・サイクル
(出所:ガートナー)
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 このハイプ・サイクルは、新しい技術に対する期待値を縦軸に、時間の経過を横軸に取った場合に描かれる曲線だ。それは次のようなことを示している。

 ITの世界で新しい技術革新が起こると、多くの人が飛びつく。その結果、期待値が上昇し過剰となる。時間の経過とともに期待が大き過ぎたことが判明すると、期待はしぼみ、人々の間に幻滅が広がる。しかし、真に価値がある技術は、そこから少しずつ使い勝手が向上し、緩やかに広い範囲で使われるようになり、やがて真に生産性を向上させるものとなる。

 私はよく経営者にこのハイプ・サイクルを示して、新技術がマスコミなどで騒がれ出したときは「『過剰期待』のピーク期」に向かって上り始めた時期だから、飛びつかないほうがよいですよと話している。一方、あまり騒がれなくなったら、利用を考え始めたほうがよいと話す。その技術が「生産性の安定期」に上り、真に生産性を高めるように成熟しつつあるかもしれないからだ。いわば、2度目の静かなブームに乗ったほうがよいというわけだ。

 新技術が本当にビジネスに役立つためには、実に多くのことが考慮されなくてはならない。出たばかりのとがった最新技術を使いこなすのは「ワクチンの治験」みたいなもので、危険が伴うし、コストもかかる。IT装置産業でもない限り、企業の経営者は「過剰期待」のピーク期にあるような新技術にあえて挑戦するのは、避けたほうが賢明だと思う。