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 経営者の中には「マニュアル」という言葉に違和感を覚え、自分の関わることではないと考える人が少なくない。その言葉には、社員を型にはめるイメージがあり、創造性を損なう印象があって、経営者として積極的に関わる気持ちが起きないのだろう。

 しかし「マニュアルは使うものではなく、作るもの」だったら、どうだろうか。「無印良品」「MUJI」のブランドで世界的に有名な良品計画を一時の38億円の赤字から復活させ、世界に飛躍させた元社長・会長の松井忠三さんがそう語っていると知ったとき、衝撃を受けた。赤字からのV字回復の秘訣もマニュアル作りにあったというのも新鮮な驚きだった。

 松井さんの著書『無印良品は、仕組みが9割』(KADOKAWA刊)によると、無印良品には店舗で使う「MUJIGRAM」というマニュアルがあり、本部には「業務基準書」と呼ばれるマニュアルがあるそうだ。MUJIGRAMは2000ページあり、業務基準書は6608ページに及ぶという。

 この本では、MUJIGRAMの貴重な内容を一部公開している。例えばマニュアルの各項目の最初には、必ず「作業の意味・目的」が書いてある。「どのように行動するか」の前に、「何を実現するか」という軸が大切だからだ。「レジ応対」の項目には「レジは店舗業務の20%を占める重要な仕事」だと書いてある。そして、「多い店舗では一日に千人のお客様がレジを通過される」との記述もある。なんと気持ちの入ったマニュアルだろうか。これを読んだレジ係は、やる気をかき立てられるであろう。

 さらに「マニュアルは徹底して具体化しなければなりません」として、商品を整然と並べるとはどういうことかが書かれている。MUJIGRAMにおいて「整然」とは「フェイスUP(タグのついている面を正面に向ける)、商品の向き(カップなどの持ち手の向きをそろえる)、ライン、間隔がそろっていること」とする。人によって捉え方の違う「整然」について、無印良品にとっての意味を定義し、徹底的に具体化した紛れのない表現で記述している。