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 みずほ銀行の3度目のシステムトラブルが話題となった。システムトラブルには様々な事情や背景があり、それを深く知らない外部の人間が、表面上知り得たことだけでとやかく言うのは基本的には避けたいと思う。

 しかし私の目から見ると、今回のトラブルを巡っていろいろと語られているにもかかわらず、論じられていない重要なポイントがあると思う。システムトラブルは他人事ではなく、その教訓を社会全体で生かすべきだと考えるので、あえて自戒を込めて論じてみたい。

 2021年2月28日に起きた障害では、ATMがカードと通帳を取り込んだまま止まってしまった。日曜日だったので行員はおらず、数時間その場で待たされた顧客もいたため大きな問題となった。4回連続した一連のトラブルの中で、最も社会にインパクトを与えたものだろう。

 このニュースに触れた際、ATMが何らかの機械故障を起こしたのではないかと思った人は多いだろう。しかし、日経コンピュータや日経クロステックなどの報道で、通帳を取り込んだままとなるのは「システム化要件通り」だったことがすぐに明らかになった。

 システム障害が起きた際、処理中だった通帳は正しく記帳されていない可能性があるので、一旦行員が確認してから返却するという要件だったのだ。つまり、システムは「正しく、要件通り」動いていたということになる。

 その要件が顧客視点で良かったかというと、もちろんそうではない。ある一面しか見ていない要件であったことは明白である。

 私はこのコラムで、経営者やビジネスサイドの部門が、ITに関することをIT部門、あるいはITベンダーに丸投げすることの弊害を度々語ってきた。丸投げとまでいかなくても、深く関わろうとはしない態度がどんなに危険かを指摘してきたつもりである。

 「システム障害が起きた際、処理中だった通帳は正しく記帳されていない可能性があるので、行員が一旦確認してから返却する」という一見正しそうなこの要件は、どのようにして決まったのだろうか。44年間やってきたシステム屋として言うと、これはいかにもITサイドが考えそうな要件なのである。