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 2021年5月28日に「デジタル立国ジャパン・フォーラム」(日本経済新聞社、日経BP主催)が開かれた際、「DXで新たな行政サービスを創る」というパネルディスカッションに参加させてもらった。今回はそこで申し上げたことを、少し敷衍(ふえん)して書きたい。

 DX(デジタルトランスフォーメーション)というトレンドを機に、行政と民間の取り組みが相まって、日本が再び30年前のような世界一の競争力を取り戻せるとよい。私はそう思っている。

 IMDというスイスのビジネススクールが毎年発表している「世界競争力ランキング」という調査がある。これが始まったのは1989年、平成元年のことである。その時、わが国の競争力は世界一とされ、1992年までの4年間は世界一を続けた。しかし、その後はランクを落とし続け、2020年はついに34位となった。有名な調査なので知っている人は多いだろう。

 重要なのは、なぜ日本が34位にまで落ちたのかということである。

 この調査は主として経済状況、政府の効率性、ビジネスの効率性、インフラという4つの大分類項目からなっている。2020年の大項目別の順位では、経済状況が11位、政府の効率性が41位、ビジネスの効率性が55位、インフラが21位である。

 この内訳を見ると、日本という国では、政府は効率が悪くビジネスはもっと効率が悪いけれども、皆で頑張って何とか11位の経済状況を支えているとも読める。IMDはガンバリズムを評価しないので、総合34位という結果となったとも言える。

 一方で、政府と企業がDXに取り組み効率性を上げることができれば、世界一の競争力の座を奪還することは決して夢ではないことも、このランキングから読み取れる。これが冒頭で「DXを機に世界一の座を取り戻したい」と書いた論拠である。

 フォーラムのパネルディスカッションでは、最初にこのことを申し上げた上で、そのために私が大切だと考えるポイントを3つ示した。

  1. 良いDXは良いビジョンから
  2. 個別最適のままではDXはできない
  3. デジタル人材の不足を嘆くより、行政トップや経営者のコミットを

 以下、この3点について敷衍したい。