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 今回は、ITコーディネータの主たるクライアントである中小企業におけるIT活用の話をしたい。大企業の読者も「自分の会社は大企業なので、この話は無縁だ」とは思わないでいただきたい。中小企業は規模が小さいだけに問題がストレートに見えやすい。大企業であっても、根源的には同じ問題を抱える会社が多いはずだ。

 日本企業の労働生産性の低さは、以前から指摘されてきた。特に中小企業の労働生産性は大企業の4割でしかない。これは「中小企業白書2018」に掲載された図を見れば一目瞭然である。

企業規模別に見た従業員一人当たり付加価値額(労働生産性)の推移
企業規模別に見た従業員一人当たり付加価値額(労働生産性)の推移
出所:中小企業庁「中小企業白書2018」
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 その大きな原因は、中小企業におけるITの活用が十分でないことにある。中小企業白書も全編を通じて、ITの活用の必要性を訴えている。

 ITコーディネータ協会に来て以来、私は多くの中小企業のIT活用状況を垣間見てきた。とても残念に思うのは、「スマホの新機種が出たから買い替えてみよう」くらいのノリで、ITベンダーにシステム開発やパッケージソフトウエアの導入を頼んでいることだ。結局、「何の役にも立たなかった」となる事例があまりにも多い。

 問題は、中小企業がITを使っていないのではなく、ITを経営の力となるように活用できていないことにある。軽いノリでITを利用しようとしても、それが労働生産性を高めることにはつながらないのだ。

 この事態を憂慮して、ITコーディネータ協会では昨年、中小企業の経営者向けにITを経営の力として生かす「コツ」を学んでもらう講座を開発した。その講座の中で、ITを経営の力として生かすステップとして次のような図を示している。

ITを経営の力として生かす4つステップ
ITを経営の力として生かす4つステップ
出所:ITコーディネータ協会
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 世間ではITを活用したビジネスモデル変革とか、イノベーションとかの重要性が喧伝されているが、この図で言いたいのは、まずは自社の業務プロセスを会社全体で最適化し、それを支える仕組みとしてITを活用するという「土台」をしっかりつくる必要があるということだ。しっかりした土台があってこそ、ビジネスモデル変革やイノベーションも可能になる。

 しかしながら日本の中小企業のITの活用レベルは、ほとんどがステップⅠの状態にある。つまり「部分的なIT導入」の段階だ。

 例えば経理係は会計用パッケージソフト、あるいはExcelを使って自分の仕事がうまく進むようにしている。しかし経理処理のために必要な社内の情報は全て紙で回ってくる。営業担当者や製造係もそれぞれExcelを使っているが、お互いのExcelは何も連動せず、それぞれ個別最適で利用されている。しかも同じ仕事でも、人によって少しずつやり方が違う。Aさんのやり方、Bさんのやり方があって、お互いはお互いを知らない。