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 1918年から1920年にかけて世界を襲ったスペイン風邪以来、100年ぶりのパンデミック(世界的大流行)となった新型コロナウイルス。ようやく効果的なワクチンがいくつか完成に近づいているようだ。早く世界中に行き渡って、新型コロナ禍が収束することを願ってやまない。

 14世紀に欧州で起きたペストのパンデミックによる労働力不足が封建制を崩壊させる一因となったように、人類はこのような大災害をきっかけに新しい世界を切り開いてきた。新型コロナ禍の収束とともに、今回もそうした前向きな動きが出てくると信じている。

 実際に新型コロナ禍では、大きな気付きが多くの人に訪れたと思う。私も好きだった「帰りにちょっと1杯」というサラリーマンの習性は根絶されてしまったが、「テークアウトで家族と1杯」も悪くないという発見があったりした。何と言っても大きかったのは、「非対面・非接触」でこれだけのことができるのだという発見だったと思う。

 さらに大切な気付きは、人々は自然にオンラインとオフラインを使い分けているということだ。私などは週の5~6割はオンライン勤務をしているが、どちらにするかは、その日の仕事によって快適なほうを選ぶことにしている。

 同じ職場の人たちとの打ち合わせなら、そのためにわざわざ通勤する必要がない。しかも画面で一緒に資料を直しながらディスカッションできるので、オンラインのほうが快適だ。しかし、初対面の顧客との打ち合わせでは、顧客から「コロナだから来なくてよい」と言われなければ、マスクをした上で直接お会いしてお話ししたいと思う。そうでないと、話した内容が相手にどこまで届いたのか、不安が残るからだ。

 必ずしもどちらが良いというわけではなく、快適なほうを選べるという選択肢が生まれたということだと思う。『アフターデジタル』『アフターデジタル2』(日経BP刊)で著者の藤井保文さんが「デジタル技術が生活の中に行き渡ると OMO(Online Merges with Offline)の世界になる。オンラインとオフラインが融合した世界になる」との趣旨を力説していたが、それが現実のものになってきている。

 藤井さんは「OMOの世界ではいかに良いユーザーエクスペリエンス(UX:顧客体験)を与えられるかが重要だ」とも主張している。確かにその通りで、中国にその良い事例がある。アリババ集団がやっている「盒馬(フーマー)鮮生」というスーパーマーケットで、中国の普通のスーパーに比べて4倍の売り上げを誇るという。まさしくオンラインとオフラインが高度に融合された顧客体験があるので、フーマーの様子を少し見てみよう。